生物毒とは?わかりやすく5分で解説
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生物毒とは、生物によって作られる毒のこと。
概要
生物の中には、生存戦略として毒を利用する種が多く存在する。たとえば、モウドクフキヤガエルは皮膚から毒素を出す。これは捕食回避戦略の一種と考えられている。反対に、毒ヘビは捕食するために毒を利用する。
毒の強さの指標
毒の効き目は動物の種類や体重、体調等によって大きく異なる。そのため、毒の強さを表す指標として半数致死量(LD50)が用いられる。LD50とは、対象の動物群に投与した場合に、その動物群の半数が死亡するのに必要な体重1kgあたりの量のこと。
但し、LD50はすべての毒素に対し一律に測定されるものではなく、対象の動物や投与方法も自由に設定できるため、単純比較はできない。
毒の分類
毒は大きく神経毒、血液毒、細胞毒に分類できる。但し、これらの毒を併せて持つ生物も多く存在する。
神経毒
神経伝達を阻害することにより呼吸困難等を引き起こす毒のこと。フグ毒やトリカブトの毒等がこれにあたる。
血液毒(出血毒)
赤血球や血小板の破壊等により血液障害を引き起こす毒のこと。クサリヘビ科の毒等がこれにあたる。
細胞毒
細胞の破壊やタンパク質合成の阻害により細胞死を引き起こす毒のこと。テングタケ属のキノコ毒等がこれにあたる。
神経毒
ボツリヌストキシンA
土壌や河川に生息するボツリヌス菌が産生する毒素のこと。確認されている毒素では最も強く、LD50(マウス,経口)は約0.5ng/kgとなる。神経に作用し筋肉を弛緩させ呼吸不全を引き起こす。筋肉弛緩作用が美容のしわ取りに用いられる(ボトックス)。
テタヌストキシン(テタノスパスミン)
土壌や汚泥に生息する破傷風菌が産生する毒素のこと。ボツリヌストキシンに次ぐ強力な毒素で、LD50(マウス,経口)は約2ng/kgとなる。神経に作用し筋肉を収縮させ呼吸不全を引き起こす。
マイトトキシン
プランクトンの渦鞭毛藻が産生する毒素のこと。LD50(マウス,腹腔内注射)は約130ng/kgとなる。神経に作用し筋肉の異常収縮を引き起こす。但し、作用機序の完全解明には至っていない。生物濃縮によって、サザナミハギ等の魚類の体内に蓄積される。
解毒剤はない。
バトラコトキシン
ヤドクガエル科のモウドクフキヤガエル等が持つ毒素のこと。LD50(マウス,皮下注射)は約2μg/kgとなる。神経に作用し筋肉を収縮させ呼吸不全を引き起こす。同類の毒素(ホモバトラコトキシン)を鳥類のズグロモリモズ等が持つ。
テトロドトキシン
海中に生息する細菌(ビブリオ属等)が産生する毒素のこと。一般にフグ毒として知られ、LD50(マウス,経口)は約10μg/kgとなる。神経に作用し筋肉を弛緩させ呼吸不全を引き起こす。食物連鎖によってフグやヒョウモンダコの体内に蓄積される(生物濃縮)。
解毒剤はない。
アコニチン
植物のトリカブトが産生する毒素のこと。LD50(マウス,皮下注射)は約300μg/kgとなる。神経に作用し筋肉を麻痺させ呼吸不全を引き起こす。解毒剤はない。
コノトキシン
貝のイモガイ類が産生する毒素のこと。LD50(マウス,詳細不明)は約12μg/kgとなる。神経に作用し筋肉を麻痺させ呼吸不全を引き起こす。解毒剤はない。
血液毒
ヤマカガシの毒
ナミヘビ科のヤマカガシが産生する毒素のこと。LD50(マウス,皮下注射)は約10mg/kgとなる。血液の凝固作用と血栓(止血時に生じる塊)を溶かす作用があり、凝固因子の消費に伴い止血ができなくなり、腎不全、脳内出血を引き起こす。
同様の毒を持つ生物にクサリヘビ科のマムシやハブがいる。
細胞毒
ベロトキシン1型
腸管出血性大腸菌が産生する毒素のこと。大腸菌O157や赤痢(志賀赤痢菌由来)の毒素として知られ、LD50(マウス,経口)は約1μg/kgとなる。タンパク質の合成を阻害し細胞の壊死を引き起こす。解毒剤はない。
リシン
植物のトウゴマの種子が産生する毒素のこと。LD50(ラット,経口)は約30μg/kgとなる。タンパク質の合成を阻害し細胞の壊死を引き起こす。解毒剤はない。
アマトキシン(α-アマニチン)
テングタケ属のキノコが産生する毒素のこと。LD50(マウス,経口)は約300μg/kgとなる。タンパク質の合成を阻害し細胞の壊死を引き起こす。解毒剤はない。
アフラトキシン
アスペルギルス・フラバス等のカビが産生する毒素のこと。LD50(ラット,経口)は約7mg/kgとなる。DNAの変異させたり複製を阻害し、肝機能障害を引き起こす。
複合毒
キロネックス(オーストラリアウンバチクラゲ)の毒
クラゲのキロネックスが産生する毒素のこと。LD50(ラット,詳細不明)は約1μg/kgとなる。細胞の壊死や激痛によるショック、心臓麻痺を引き起こす。神経、細胞等に影響を与える複合毒と考えられている。