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半側空間無視とは?わかりやすく5分で解説

半側空間無視とは、脳の損傷により左右どちらかの刺激を認知できない症状のこと

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概要

大脳は注意、記憶、言語、思考、行為等の高次脳機能に関わる脳の領域となる。病気や事故等で大脳の一部が損傷すると、その部位ごとに異なる障害(高次脳機能障害)が起こる。その中で半側空間無視は、左右どちらかの刺激を認知できなくなる症状をさす。

症状

具体的には皿の右側の料理だけを食べる、左側の人から声をかけられて右側に振り向くまたは気づかない、右側だけ髭を剃る、左側の物にぶつかる等の症状がある。このように、左側の刺激を無視する場合が圧倒的に多い。これを特に左半側空間無視という。

視力障害との違い

実験で左半側空間無視の患者に対し、普通の家の絵とその家の左側が燃えている絵を見せ、どちらに住みたいか質問した。すると同じ絵のため選べないと回答した。そこで、あえて選ぶならどちらかと質問すると、高確率で普通の家を選んだ。

また別の実験では左半側空間無視の患者をモニター前に座らせ、左側に一瞬動物を表示しその後右側に果物を表示した時と、左側に一瞬果物を表示しその後右側に果物を表示した時での反応速度を比較した。すると後者のほうが早く反応した。

このように、先に与えた刺激が後の刺激に影響を与える現象をプライミング効果という。つまり、半側空間無視視力が正常で物理的には見えているが、意識にのぼらない症状といえる。この点が片側が見えなくなる障害(同名半盲)とは異なる。

検査方法

半側空間無視は患者によって症状が異なるため、様々な検査方法を用いて診断を行う。主な検査方法を以下に示す。

抹消試験

抹消試験とは、ランダムに配置された図形のすべてに印を入れさせる試験のこと。左半側空間無視の患者は、右側の図形にしか印を入れない。

模写試験

模写試験とは、花や家等の絵を模写させる試験のこと。左半側空間無視の患者は、絵の右側しか模写しない。この時の結果は二通りある。たとえば、左右に花が1本ずつある絵では、右の花だけ模写する場合と左右の花をそれぞれ右側だけ模写する場合がある。

前者を自己中心無視、後者を物体中心無視という。

線分二等分試験

線分二等分試験とは、左右に伸びた線分の中心位置に印を入れさせる試験のこと。左半側空間無視の患者は印が右側にかたよる。

描画試験

描画試験とは、時計や人等を描かせる試験のこと。たとえば時計の文字盤を描かせる場合、左半側空間無視の患者は数字を右側に密集させたり、もしくは数字を右側にしか描かない。また絵や文字が傾く傾向がある。

これにより、半側空間無視の患者は空間軸が傾いていると考えられている。

発生メカニズム

半側空間無視は患者によって症状が異なり複雑なため、未だに発生メカニズムが明らかになっていない。主な説を以下に示す。

表象障害説

表象障害説とは、意識下で片側のイメージが作れないために無視が起こるという説のこと。1978年、イタリアの脳神経科学者ビジャッキらが提唱した。彼らはミラノ大聖堂広場をよく知る患者を集め、大聖堂に正面を向いた場合と背を向けた場合を想像させた。

そこで何が見えるか質問すると、どちらを向いた場合でも右側の景色のみを答え、左側の景色を無視した。さらに想像上の向きを変えただけで少し前に答えられた景色を答えられなくなった。つまり無視は脳内(意識)でも起こる

注意障害説

注意障害説とは、注意が片側にしか向けられないために無視が起こるという説のこと。1987年、オーストリアの脳神経科学者キンスボーンらが提唱した。主に右脳は左右空間、左脳は右空間に注意が働くため、脳の損傷で左右の注意に偏りが生じると考える。

現在主流の説。

方向性運動低下説

方向性運動低下説とは、無視する側への運動がうまくできないために無視が起こるという説のこと。1993年、アメリカの神経科医ハイルマンらが提唱した。

一側性記憶障害説

一側性記憶障害説とは、無視する側の刺激が記憶できないために無視が起こるという説のこと

病巣

半側空間無視の病巣は未だに特定されていない。1999年、アメリカの神経科医メスラムが神経ネットワーク仮説を提唱した。これは知覚入力を行う頭頂葉、運動出力を行う前頭葉、動機付けを行う帯状回等が全体で空間の注意を行っていると考える仮説のこと。

現在、これら神経ネットワークの損傷が半側空間無視を引き起こすと考えられている。

治療法

半側空間無視の治療には、感覚への刺激が有効とされる。たとえば、耳に冷水や温水を注入するカロリック刺激、頸部への振動刺激、内耳への電気刺激等がある。また視界を矯正するプリズム適応療法も行われる。

これは左半側空間無視の患者の場合、視野を右にずらすプリズム眼鏡をかけさせ、目標を指で指す訓練を繰り返し行わせる。その後眼鏡を外すと、治療前よりも左側に視界が矯正され認知範囲が広がるというもの。