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心の理論とは?わかりやすく5分で解説

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心の理論とは、アメリカの心理学者プレマックとウッドルフが提唱した自己と他者を区別しそれぞれが心を持つ存在だと認識する能力のこと

ヒトでは4歳頃に獲得すると考えられている。

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心の理論の提唱

1978年、アメリカの心理学者プレマックとウッドルフが、論文チンパンジーは心の理論を持つかで心の理論の存在を提唱した。心の理論とは、他者が心を持つ存在だと認識し、その心の状態の推測から他者の行動を理解する能力のこと

たとえば友人がコーラを購入している時、自分は炭酸が苦手でのども渇いていないが、友人は炭酸が好きでのどが渇いていたためにコーラを購入したと、友人の心の状態を推測し理解する。このように他者の心を理解する能力がある時、心の理論を持つという

誤信念課題

1978年、アメリカの哲学者デネット、ハーマン、イギリスの哲学者ベネットが、他者が誤った信念(誤信念)を持つものだと認識できる時、心の理論を持つといえると主張した。1983年、オーストリアの心理学者ヴィマーとパーナーが誤信念課題を考案した。

ヒトが誤信念課題に正答できるようになるのは4歳頃とされる。つまり、ヒトの心の理論の獲得は4歳頃となる。以下に代表的な課題を示す。

サリー・アン課題

サリーとアンが同室にいる。サリーはビー玉をかごに入れ部屋を出た。アンは、サリーが部屋を出ている間にビー玉をかごから取り出し箱に入れ替えた。いまサリーが部屋に帰ってきた時、サリーはビー玉を探すためにどこを見るかと被験者に質問する。

正解はかごだが3歳児の大半は箱と答える。

スマーティ課題

被験者にスマーティ(チョコレート菓子)の箱を見せ、何が入っているか聞く。被験者はスマーティと答える。そこで、実際には中に鉛筆が入っていることを確認させる。いま中身を見ていない人は、中に何が入っていると答えると思うかと被験者に質問する。

正解はスマーティだが3歳児の大半は鉛筆と答える。

心の理論の仕組み

心の理論の仕組み、つまりどのように他者の心を理解するのかについては大きく2つの立場がある。以下に内容を示す。

理論説

理論説とは、自然科学の理論と同様に心の働きを理論化することで、他者を理解するという説のこと。たとえば、磁石が鉄を引きつけるのは磁力のためという理論が成り立つが、お菓子が子供を引きつけるのは甘いものへの欲求のためと理論化できる。

さらに理論説は、先天的(生得的)に理論や知識が備わっていると考えるモジュール説と、後天的に理論や知識を獲得すると考える子供の科学者説に分かれる。前者は生得的な運動能力の歩行に似て、後者は後天的な運動能力の自転車の運転に似ている。

シミュレーション説

シミュレーション説とは、自己の心をモデルに他者の心をシミュレーションすることで他者を理解するという説のこと。ある車の衝突安全性を調べる時、理論的に計算するのが理論説、同様の車で衝突試験をするのがシミュレーション説の考えに似ている。

シミュレーション説では、もし自分が相手の立場だったらと考え行動を予測するため、理論や知識は必要ない。

自閉症の研究

自閉症とは発達障害の一種で、対人関係やコミュニケーション障害および特定の対象への強い興味等の特徴がある。 1985年、イギリスの心理学者コーエンらが、健常児やダウン症児に比べ自閉症児の誤信念課題の回答率が低いことを示した。

このことから、自閉症は心の理論が欠損している障害という考えが生まれた(心の理論欠損仮説)。しかし心の理論欠損仮説では、なぜ強い興味を示すようになるのかを説明できない。そのため単純に質問の方法が悪いために回答率が低いのではという意見もある。

ミラーニューロンの発見

1996年、イタリアの神経生理学者リッツォラッティが、サルの脳内で自分が行動する時と他者が同じ行動をするのを見た時に、同じく活性化(発火)する神経細胞ミラーニューロンを発見した。つまり、脳には他者の行動を自分の行動と等しく扱う領域がある

ミラーニューロンは、たとえば相手がアイスを食べるのを見た時と自分がアイスを食べる時で等しく発火する。そのため、シミュレーション説の証拠示すものとして研究が進められている。但し、倫理や技術的な問題もありヒトでは存在が確認されていない。

動物の心の理論

動物が心の理論を持つかどうか調べるためには、視覚や聴覚を用いた誤信念課題を与える。たとえば、対象だけに餌の場所を教え、他の動物の鳴き声や視線を与えた時とそうでない時で、餌を隠すそぶりや餌に向かうルート等行動に違いがでるかを調べる。

この時の行動に違いがでれば、餌の場所を知らない他者の存在を理解し心の理論を持つ可能性があるといえる。但し、単に過去の経験から学習しただけの可能性もある。チンパンジー等の霊長類やワタリガラス、ブタ等が心の理論を持つ可能性がある。