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ポアンカレ予想とは?わかりやすく5分で解説

ポアンカレ予想とは、フランスの数学者ポアンカレが提唱した単連結な3次元閉多様体は3次元球面と同相という予想のこと

簡単に言うと、宇宙(3次元閉多様体)に輪を描いて、その輪が1点に縮むことができる(単連結)ならば、宇宙はだいたい丸い形をしている(3次元球面と同相)という予想。発表から約100年後の2002年、ロシアの数学者ペレルマンによって証明された。

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背景

19世紀末、フランスの数学者ポアンカレは、図形を柔らかく変形できるものとして扱う新たな数学の分野、位相幾何学(トポロジー)の基礎を築いた。1904年、彼は論文の中で単連結な3次元閉多様体は3次元球面と同相というポアンカレ予想を発表した。

命題の解説

単連結な3次元閉多様体は3次元球面と同相の意味について解説する。

単連結とは

図形に描かれた輪が、表面に沿って1点に縮むことができる性質のこと。簡単に言うと、図形に伸縮自在の輪ゴムをはめた時、表面から浮かせることなく輪ゴムが最後まで縮めば単連結といえる。たとえばボールは単連結だが、浮き輪は単連結ではない。

これは浮き輪の外周に輪ゴムをはめた時、表面から浮かせることなく浮き輪の穴以下に縮むことができないため。もしくは、浮き輪の穴を通すように輪ゴムをはめた時、浮き輪の本体以下に縮むことができないため。つまり、単連結な図形には貫通穴がない

3次元閉多様体とは 

局所的に3本の座標軸で表せる有限で縁や切れ目のない図形のこと。わかりやすいように次元を落として説明する。2次元閉多様体の例に地球表面がある。地球表面は、局所的には2本の座標軸(緯度と経度)で表せる。また大きさが有限で縁なくつながっている。

局所的としているのは、全体で考えると座標軸が地球表面に沿って一周し軸の交点が2か所できてしまい成り立たなくなるため。この地球表面を局所的に表したものが地図になる。また宇宙は、局所的に3本の座標軸で表せる3次元閉多様体と考えられている。

3次元球面とは

4次元(4つの座標軸)空間内で原点から等距離の点の集合のこと。わかりやすいように次元を落として説明する。0次元球面は1つの座標軸の正と負の2点となる。1次元球面は2つの座標軸のため円周となり、2次元球面は3つの座標軸のため球の表面(球面)となる。

同相とは

連続的に変形させて同じ形になる図形同士のこと。2つの図形は、切り貼りを除き粘土のように自由に変形させてよい。たとえばコーヒーカップ、ドーナツ、浮き輪、ハンガーはいずれも貫通穴が1つで同相といえる。

高次元での証明

数学者たちは、ポアンカレ予想の扱う3次元空間ではなく、高次元から証明を進めた。なぜ高次元から取り組むのかというと、自由度が増し扱いやすくなるため。たとえば、あやとりの糸は3次元空間では絡まないが、地面に映った2次元の影は絡まって見える。

1961年、アメリカの数学者スメールは、5次元以上の場合に命題が成り立つことを証明した。1983年、アメリカの数学者フリードマンは、4次元の場合に命題が成り立つことを証明したが、それ以降研究は難航し行き詰った。

これらの功績により1966年スメールが、1986年フリードマンが数学界で最も権威のある賞と呼ばれるフィールズ賞を受賞した。

幾何化予想

1982年、アメリカの数学者サーストンは、3次元多様体が最大8種類の断片に分解できると予想した(幾何化予想)。この8種類の断片のうち、単連結な図形は3次元球面のみのため、幾何化予想が証明できれば、同時にポアンカレ予想も証明されることになった。

1982年、彼はこれらの功績によりフィールズ賞を受賞した。

リッチフロー

1982年、アメリカの数学者ハミルトンは、自身が考案したリッチフローという手法を用いて幾何化予想を条件付きで証明した。リッチフローとは、熱力学にヒントを得た多様体を膨張させたり、収縮させる整形方法のこと。

ポアンカレ予想の証明

2002年、ロシアの数学者ペレルマンは、インターネット上にリッチフローを発展させた手法(手術)で、幾何化予想を証明したと発表した。2003年、彼はアメリカのプリンストン大学に招かれ、証明の講演を行うことになった。

講演はトポロジーの専門家たちの前で行われたが、トポロジーではなく微分幾何学や物理学の解法を用いた証明だったため、誰も理解することができなかった。2006年、複数の専門家チームの審査を経て、ポアンカレ予想の証明が確認された。

同年、彼はこれらの功績によりフィールズ賞を受賞したが、辞退し数学界から姿を消した。ちなみに2003年の講演には、フェルマーの最終定理を証明したアメリカの数学者ワイルズや、ノーベル賞を受賞したアメリカの数学者ナッシュも出席していた。