フェルマーの最終定理とは?わかりやすく5分で解説
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フェルマーの最終定理とは、フランスの数学者フェルマーが提唱したnが3以上の整数の時、x^n+y^n=z^nを満たす自然数の組(x,y,z)は存在しないという予想のこと。
発表から300年以上たった1994年、イギリスの数学者ワイルズによって証明された。
背景
17世紀、フランスのアマチュア数学者フェルマーが、古代ギリシアの数学者ディオファントスの著書算術を読み、余白にフェルマーの最終定理を記した。同時に真に素晴らしい証明を見つけたが、この余白では狭すぎて書くことができないと書き込んだ。
1670年、彼の息子がフェルマーの書き込み入りの算術を出版した。その後、フェルマーが本に書き込んだ様々な予想は次々に証明されていったが、フェルマーの最終定理だけは誰も証明することができなかった。
フェルマーの最終定理は、nが3以上の整数の時、x^n+y^n=z^nを満たす自然数の組(x,y,z)は存在しないというもの。本人は別のページの余白にn=4の時に式が成り立たないことのみ証明していた。
最初の挑戦
1770年、スイスの数学者オイラーがn=3を証明した。3、4といった個々の数字の証明は、その倍数の証明も兼ねる。なぜならn^6は(n^2)^3と等しいため。また、すべての自然数は素数(1と自分自身でしか割りきれない数)の倍数で表せる。
つまりフェルマーの最終定理の証明は、nが素数の場合のみ考えればよい。但し素数は無限に存在する。
n=100までの証明
1823年、フランスの数学者ソフィが素数とフェルマーの最終定理の関係性をまとめた(ソフィジェルマンの定理)。これによりn=5と7が証明された。その後、ドイツの数学者クンマーが理想数という概念を考え出し、n=100までのすべて素数を証明した。
しかし同時に彼は、理想数を用いてもフェルマーの最終定理の証明は不可能と結論付けた。次第に個々の数字の証明は行われなくなった。
谷山志村予想とフェルマーの最終定理
1955年、日本で開催した数学の国際会議で日本の数学者谷山豊が、別々の数学の領域だった楕円曲線とモジュラー形式が実は結びついていると予想した。この予想は同僚の日本の数学者志村五郎によって定式化された。これを谷山志村予想という。
1985年、ドイツの数学者フライが仮にフェルマーの最終定理が誤っている場合、導かれる楕円曲線(フライ曲線)はモジュラー形式に結びつかないと予想した。この予想はフランスの数学者セールによって定式化された。これをフライセール予想という。
1986年、アメリカの数学者リベットがフライセール予想を証明した。これにより、フェルマーの最終定理の証明は、谷山志村予想を証明すればよいことになった。このロジックを背理法という。
背理法
背理法とは、ある命題を偽と仮定した時の矛盾を示すことにより、命題が真だとする証明法のこと。たとえば1+1=2を証明するために、1+1≠2(命題を偽)と仮定する。この式の両辺から1を引くと1≠1となり矛盾する。そのため1+1=2は真といえる。
フェルマーの最終定理を偽と仮定した時フライ曲線が導かれるが、これは谷山志村予想に矛盾する。この矛盾は谷山志村予想が正しいときに成立するため、谷山志村予想が証明できれば、背理法によりフェルマーの最終定理が真といえる。
フェルマーの最終定理の証明
イギリスの数学者ワイルズはフライセール予想証明の報を聞き、フェルマーの最終定理の証明に着手した。楕円曲線とモジュラー形式の結びつきを証明するためには、両者の比較が必要となる。3年後、彼はガロア表現に変換して比較する方法にたどり着いた。
ガロア表現へのアプローチには岩澤理論を採用したが、数か月後に行き詰った。1991年、岩澤理論を捨てコリヴァギンフラッハ法を採用した。1993年、ワイルズはイギリスで開催した講演会で、フェルマーの最終定理を証明したと発表した。
証明の修正
証明の発表は世界的なニュースとなったが、審査においてコリヴァギンフラッハ法のロジックに欠陥が見つかった。ワイルズはイギリスの数学者テイラーと一緒に修正を試みたが、解決策の見つからないまま1年が過ぎた。
1994年、諦めかけていたワイルズがせめて失敗した理由を明らかにしようとコリヴァギンフラッハ法を見直していた時、突然一度捨てた岩澤理論を用いた修正方法をひらめいた。1995年、再審査を経てフェルマーの最終定理の証明が確認された。
新たな証明方法
2012年、 京都大学の教授望月新一がabc予想を証明したと発表した。abc予想が正しい場合、nの解は5以下に絞られる。n=3,4,5は既に証明済みのため、abc予想によってフェルマーの最終定理が簡潔に証明できる。
2020年、論文が欧州数学会発行の専門誌PRIMSに受理され、abc予想の証明が認められた。