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CP対称性の破れとは?わかりやすく5分で解説

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CP対称性の破れとは、粒子と反粒子が非対称な振る舞いをする事象のこと

または、粒子の電荷(C)と空間(P)を反転(CP変換)させた反粒子の世界で、粒子の世界と同じ物理法則が成り立たないことをいう。現在の宇宙がほとんど反物質のない物質優勢宇宙になった理由を説明するために必要な条件の1つ

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素粒子について

物質の最小単位を素粒子という。以下3種に分類される。

ゲージ粒子

基本相互作用を伝える素粒子のこと。電磁気力を伝える光子(フォトン)、弱い力を伝えるウィークボソン、強い力を伝えるグルーオンの3種と、未発見だが重力を伝える重力子(グラビトン)があるとされる。

ヒッグス粒子

物質に質量を与える素粒子のこと。

フェルミ粒子(フェルミオン)

物質を形作る素粒子のこと。陽子や中性子等を構成するクォークと電子等のレプトンに分かれる。クォーク同士が強い力で結びついたものをハドロンという。ハドロンには、クォークと反クォークからなる中間子と、3つのクォークからなるバリオンがある。

反粒子について

粒子には電荷が反対の反粒子が必ず存在する反粒子が粒子に遭遇すると、互いに衝突し消える(対消滅)。この時すべての質量がエネルギーに変わる。また、高いエネルギーがあると粒子と反粒子がペアで生まれる(対生成)。

基本相互作用について

自然界に働く力は電磁気力、弱い力、強い力、重力の4つと考えられている。これを基本相互作用という。

電磁気力

原子核と電子や、原子同士を結び付け原子や分子を作る力のこと。電気と磁気の力。

弱い力

重い素粒子から軽い素粒子に崩壊する時の力のこと。

強い力

クォーク同士を結び付け、陽子や中性子等を作る力のこと。

重力

物質同士が引かれ合う力のこと。

 

背景 

1928年、イギリスの物理学者ディラックが、特殊相対性理論量子力学を結び付けるディラック方程式を発表し、電子の反粒子(陽電子)の存在を予言した。1932年、アメリカの物理学者アンダーソンが陽電子を発見した。

1933年ディラックが原子理論における新しい理論形式の発見で、1936年アンダーソンが陽電子の発見でノーベル賞を受賞した。

対称性の破れの発見

1956年、中国の物理学者ヤンとリーがK中間子のP対称性の破れを予言した。P対称性の破れとは、粒子を空間反転(P変換)させた時、反転前後で同じ物理法則が成り立たないことをいう。同年、中国の物理学者ウーがK中間子のP対称性の破れを観測した。

1964年、アメリカの物理学者フィッチとクローニンが、K中間子のCP対称性の破れを観測した。CP対称性の破れとは、粒子の電荷(C)と空間(P)を反転(CP変換)させた反粒子の世界で、粒子の世界と同じ物理法則が成り立たないことをいう。

1957年ヤンとリーがパリティ(P)についての研究で、1980年フィッチとクローニンがK中間子崩壊におけるCP対称性の破れの発見でノーベル賞を受賞した。

サハロフの3条件

宇宙誕生初期は、物質と反物質が同数存在していたとされる。しかし、現在の宇宙はほとんど物質で構成されている。それでは、いつどのように物質と反物質に偏りが生じたのか。これをバリオン数生成問題(バリオジェネシス)という。

バリオン数とはクォークを1/3、反クォークを-1/3と数える量のこと。つまり、宇宙誕生初期のバリオン数はゼロとなる。1967年、ロシアの物理学者サハロフが、物質優勢宇宙となるために必要な条件をまとめた(サハロフの3条件)。

バリオン数の非保存

クォークと反クォークの量に偏りが生じる必要があるクォークと反クォークが対生成と対消滅を繰り返しバリオン数が保存される(変わらない)なら、物質優勢宇宙は生まれない。

CおよびCP対称性の破れ

粒子と反粒子の振る舞いが互いに異なる必要がある。粒子と反粒子が同じ物理法則に従うなら互いの量は偏らず、物質優勢宇宙は生まれない。

非平衡状態

反応が一方向の必要がある。平衡状態ではバリオン数が増える反応と減る反応が同じだけ起こるため、物質優勢宇宙は生まれない。

小林益川理論 

1973年、日本の物理学者小林誠益川敏英が、当時3つしか発見されていなかったクオークが6つあればCP対称性の破れが説明できると発表した(小林益川理論)。その後、1994年までに予言した3つのクォークが発見された。

2001年、B中間子のCP対称性の破れが観測された。2008年小林と益川は、クォークが3世代以上ある事を予言するCP対称性の破れの起源の発見によってノーベル賞を受賞した。クォークは性質と質量の違いによって、6種類が3世代に分類される。

しかし、小林益川理論で求めた物質の数は実際の物質の数に10桁足りない。そのためCP対称性の破れは、小林益川理論が対象とするクォークだけでなく、レプトンでも起こると考えられ研究が進められている。