航空事故とは?わかりやすく5分で解説
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航空事故とは、航空機が起こした事故のこと。
以下に原因別の事例を示す。
ルール不備
1956年グランドキャニオン空中衝突事故
当時、目視に頼る有視界飛行による同一高度での飛行と、航路を外れての飛行が容認されていたために、2機が空中衝突した。
1971年ヒューズエアウエスト706便空中衝突事故
当時、軍と民間に連携体制がなく互いを認識できなかったために、軍用機と旅客機が空中衝突した。
2002年ユーバーリンゲン空中衝突事故
1機が管制官に、もう1機が空中衝突防止装置(TCAS)の指示に従ったために空中衝突した。以降TCAS優先の規則になった。指示を出した管制官は遺族に刺殺された。
規則違反
1994年アエロフロート航空593便墜落事故
機長が息子に操縦桿を握らせた際、意図せず自動操縦解除のコマンドが入力され操縦不能で墜落した。
設計不良
1953~1954年コメット連続墜落事故
毎回の飛行で機体へ繰り返し負荷がかかり、金属の強度が低下(金属疲労)し、空中分解した。強度計算方法や丸い窓の採用等、後世に影響を与えた。
1972年アメリカン航空96便貨物ドア破損事故
貨物ドアの欠陥により飛行中ドアが外れ、空気流出により沈んだ床が操縦用ケーブルを破壊したため緊急着陸した。その後不適切な改修により再発し、1974年トルコ航空DC-10パリ墜落事故が発生した。
整備不良
1983年ギムリーグライダー
給油時ポンドとグラムの単位を間違え燃料切れでエンジン停止したが、滑空して着陸した。
1985年日本航空123便墜落事故
1978年日本航空115便しりもち事故で破損した。その時の不適切な修理により、飛行中機体尾部が破壊され墜落した。単独機で史上最悪の事故(死者520人)。
1990年6月10日ブリティッシュエアウェイズ5390便不時着事故
ネジのサイズを誤り飛行中操縦席の窓ガラスが外れ、緊急着陸した。機長の半身が機外に吸い出されたが無事だった。
1996年アエロペルー603便墜落事故
機体洗浄時、速度計(ピトー管)に貼った保護テープをはがし忘れ、高度と速度が分からなくなり墜落した。
パイロットエラー
1972年ウルグアイ空軍機571便遭難事故
パイロットの現在地の誤認によりアンデス山脈に衝突した。生存者は死体を食べて生き延びた。
1972年イースタン航空401便墜落事故
車輪固定ランプが点灯しないため確認中、意図せず自動操縦が解除されたが、車輪確認に没頭していたために気付かず墜落した。以降、自動操縦解除警報が追加された。
1977年テネリフェ空港ジャンボ機衝突事故
不適切な管制と一方の機長の独断専行により2機が滑走路上で衝突した。以降、管制用語の標準化と復唱が義務化された。複数機で史上最悪の事故(死者583人)。
1994年中華航空140便墜落事故
自動操縦を解除したと思い込んだパイロットが操作を誤り墜落した。当時、エアバス製の機体は操縦桿を動かしても自動操縦が解除されなかった。これは、エアバスが機械優先の設計思想のため。反対にボーイングは人間優先の設計思想を持つ。
1996年ニューデリー空中衝突事故
一方のパイロットが管制官の英語を理解できず、誤った高度を飛び空中衝突した。
2000年ガルフエア072便墜落事故
夜間洋上での飛行により目印がなく、パイロットが姿勢や方向を正しく認識できない状態(空間識失調)に陥り墜落した。
故意
1982年日本航空350便墜落事故
着陸降下中パイロットが故意にブレーキ操作(逆噴射)を行い墜落した。パイロットは精神障害と診断された。
管制ミス
1976年ザグレブ空中衝突事故
多忙な管制官の引き継ぎミスと高度の誤認識により、2機を同一高度に誘導したため、空中衝突した。
自然環境
1966年英国海外航空機空中分解事故
富士山周辺特有の乱気流(山岳波)により空中分解した。
1975年イースタン航空66便着陸失敗事故
強い下降気流(ダウンバースト)により着陸に失敗した。以降、世界の空港に気象レーダーが導入された。
1982年ブリティッシュエアウェイズ9便エンジン故障事故
火山灰により一時全エンジンが停止したが、再始動に成功し緊急着陸した。
2009年USエアウェイズ1549便不時着水事故
鳥の衝突(バードストライク)により全エンジンが停止し不時着した。別名ハドソン川の奇跡。
火災
1980年サウジアラビア航空163便火災事故
貨物室から出火し緊急着陸に成功したが、乗員と救急隊の対応が悪く全員死亡した。
撃墜
1988年イラン航空655便撃墜事件
アメリカ軍のミサイル誤射で撃墜された。
ハイジャック
1996年エチオピア航空961便ハイジャック墜落事件
犯人に給油を要求したが却下され、燃料切れで墜落した。
2001年アメリカ同時多発テロ
テロ目的でワールドトレードセンターに2機、ペンタゴンに1機、郊外に1機墜落した。
CRISPR/Cas9(クリスパーキャスナイン)とは?わかりやすく5分で解説
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CRISPR/Cas9(クリスパーキャスナイン)とは、フランスの生物学者シャルパンティエとアメリカの生物学者ダウドナが開発した、従来方法にくらべ圧倒的に簡便なゲノム編集技術のこと。
歴史
背景
人類は数千年前から品種改良を行ってきた。これは、自然の突然変異によって偶然現れた形質を人為的に交配させ、望んだ形質の品種を作るというもの。たとえば観賞用の鳩では、羽の色や筋肉の付き方等が異なる品種を作った。
この鳩の人為的な形質の選択は、イギリスの博物学者ダーウィンが自然選択説を着想するきっかけの1つとなった。自然の突然変異は発生頻度が低く、発現する変異も選べなかったため、初期の品種改良には時間がかかった。
人為突然変異の発見
1926年、アメリカの遺伝学者マラーが、生物にX線をあてると突然変異が誘発されること(人為突然変異)を発見した。これにより品種改良は加速したが発現する変異は選べなかった。1946年、彼はX線照射による突然変異体発生の発見でノーベル賞を受賞した。
DNAの解明
1950~70年代DNAの主な働きが解明された。DNAはアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4つの物質の並び方(塩基配列)で遺伝情報を伝える。またAとT、GとCはペアになる性質(相補性)があり、はしごをねじったような二重らせん構造になる。
遺伝子組み換え技術の登場
1968年、スイスの微生物学者アーバーとアメリカの微生物学者スミスが、特定の塩基配列を切断する酵素(制限酵素)を発見した。1973年、これらのツールを用いアメリカの遺伝学者コーエンと生化学者ボイヤーが、遺伝子組み換え技術を確立した。
この技術によって、不要な遺伝子を無効化(ノックアウト)したり、他の生物の遺伝子(外来遺伝子)を目的の生物に導入し、望んだ形質を発現できるようになった。たとえば、パンジーの青い色素の遺伝子から青いバラを作った。
1978年、アーバーとスミスが制限酵素の発見等の功績でノーベル賞を受賞した。
遺伝子組み換え技術の制約
制限酵素は4~8塩基程度しか認識できないため、標的以外に同じ配列が存在すると同様に切断してしまう。これらの理由により、遺伝子組み換えの成功率は万に一つレベルで極めて低い。さらに種類によって標的配列が決まり、任意の配列を切断できない。
ゲノム編集の登場
塩基は特定のタンパク質と結合する性質がある。つまり、標的配列に合わせてタンパク質を並べ、そこに制限酵素を加えたものを作れば任意の配列の切断が可能になる。この考えをもとに1996年にZFN、2010年にTALENという技術が誕生した。
このように、任意に塩基配列を編集する技術をゲノム編集という。ゲノムとは、生物が持つDNAのすべての遺伝情報のこと。
CRISPR/Cas9の開発
1987年、日本の生物学者石野良純が、細菌のDNAに繰り返し現れる塩基配列(CRISPR)を発見した。2005年、デンマークの食品会社ダニスコの研究員が、細菌のCRISPRに挟まれたDNAと、細菌が以前感染したウイルスのDNAの一部が一致することに気付いた。
その後CRISPRは細菌の免疫機能だと突き止められた。細菌は感染したウイルスのDNAの断片をCRISPR間に取り込む。後に同じウイルスが侵入すると、CRISPR間のDNAをコピーしたガイドRNAがウイルスのDNAを探し、Cas9酵素がそれを切断(破壊)する。
2012年、CRISPRを応用しフランスの生物学者シャルパンティエとアメリカの生物学者ダウドナが、CRISPR/Cas9を開発した。CRISPR/Cas9は、相補性を利用し標的配列を探すガイドRNAと、標的配列を切断するCas9酵素で構成される。
特徴
CRISPR/Cas9で用いるガイドRNAは、ZFNやTALENで用いるタンパク質にくらべ容易に設計できる。これにより高度な技術は使わず、安価で簡単に誰でもゲノム編集ができるようになり、医療、農業、産業等の分野で爆発的に広まった。
一方、認識できる配列が20塩基と短く、数個のミスマッチを許容するため、標的以外を切断することがある(オフターゲット効果)。これは意図しない突然変異のリスクとなる。ちなみにTALENは、30~40塩基を認識できオフターゲット効果が起きにくい。
技術以外の問題
遺伝子ドライブ
特定の遺伝子を急速に拡散させる技術のこと。CRISPR/Cas9を用いたマラリアを媒介する蚊の絶滅方法等のアイデアがある。環境への影響が問題視されている。
デザイナーベビー
受精卵の段階で遺伝子操作が行われた人間のこと。2018年、中国の生物物理学者ハーが、CRISPR/Cas9を用い世界初のデザイナーベビー(双子のルルとナナ)を誕生させた。倫理的に問題視されている。
脳死臓器移植とは?わかりやすく5分で解説
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脳死臓器移植とは、本来の機能を失った臓器の代わりに、脳死者から摘出した正常な臓器を移植する行為のこと。
背景
20世紀初頭、フランスの外科医カレルが血管縫合・吻合術を確立し、外科の目的が切除から修復に変わった。1905年、彼は動物実験によって移植した臓器が機能しなくなること(拒絶反応)を観察し、これを炎症や栄養不良によるものと考えた。
1912年、彼は血管縫合と臓器移植の研究でノーベル賞を受賞した。1940年代、イギリスの生物学者メダワーが、拒絶反応は異物を排除するための免疫が引き起こすと証明した。つまり、拒絶反応を防ぐためには免疫を抑える必要がある。
免疫抑制剤の登場
1950年代、患者に放射線をあて免疫を抑えていたが移植成功率は低かった。1952年、アメリカの薬理学者ヒッチングスとエリオンが、免疫抑制剤アザチオプリンを発見し、1961年イギリスの外科医カーンが有効性を証明した。以降薬物療法が主流になった。
1972年、スイスの製薬会社サンドの研究員ボレルが、シクロスポリンの免疫抑制作用を発見した。この薬は従来品に比べ免疫抑制効果が格段に優れていたため、1980年代から移植成功率が飛躍的に向上した。
脳死の定義
1950年頃から、人工呼吸器等の発明により脳死という新しい死の概念が生まれた。多くの臓器は死後に鮮度を保てない。脳死は移植直前まで臓器の鮮度を保てるため、臓器移植の可能性を広げた。
脳死の定義には、脳の不可逆的機能喪失を基準とする機能死説(全脳死説、脳幹死説、大脳死説)と、脳の不可逆的組織損傷を基準とする器質死説がある。 不可逆的とは、回復しないという意味。
全脳死説
すべての脳の不可逆的停止をもって脳死とする説のこと。日本を含む多くの国が採用している。人工呼吸器で延命できるが、普通数週間以内に心臓死を迎える。
脳幹死説
呼吸等生命維持を司る脳幹の不可逆的停止をもって脳死とする説のこと。イギリスが採用している。人工呼吸器で延命できるが、普通数週間以内に心臓死を迎える。
大脳死説
思考や記憶等を司る大脳の不可逆的停止をもって脳死とする説のこと。多くは自発呼吸でき回復する可能性がある状態(植物状態)のため、不可逆的停止を判断できない。植物状態は一般に脳死と見なさずドナーにならない。
器質死説
脳組織の不可逆的損傷をもって脳死とする説のこと。医学の進歩により、脳の蘇生限界点が伸びている。つまり現代では脳死(機能死)と診断されるケースでも、将来は脳死と診断されなくなる可能性がある。そのため、脳細胞が壊れて初めて死と考える。
脳死判定基準
1950-60年代、様々な臓器の移植技術が確立したため、それまで曖昧だった脳死判定基準の明確化が求められた。1968年、アメリカのハーバード大学が脳死判定基準(ハーバード基準)を作成し、各国の基準の原型になった。
同年、外科医和田寿郎が日本初の心臓移植手術を行ったが、83日後に患者が死亡した。彼は、脳死判定の妥当性等の疑惑により殺人容疑をかけられた(和田心臓移植事件)。1985年、厚生省が脳死判定基準(竹内基準)を作成し、以降日本の標準的基準となった。
竹内基準では、深い昏睡状態、瞳孔散大、刺激による反射(脳幹反射)なし、脳波平坦、自発呼吸なしの診断を間隔をあけて2回行い脳死を判定する。
法整備
1997年、日本で臓器移植法が施行した。これにより、15歳以上の脳死者で臓器提供の意思表示をしていた場合に臓器提供が認められた。年齢制限は、民法で遺言と認められる年齢が15歳以上のため。そのため、小児患者は海外渡航移植に頼るしかなかった。
2010年、日本で改正臓器移植法が全面施行した。これにより、脳死者が臓器提供拒否の意思表示をしていなかった場合の家族の承諾による臓器提供、虐待を受けていない15歳未満の脳死者の臓器提供、親族への優先的な臓器提供が認められた。
脳死と死の関係
日本では法整備のために脳死と死の関係が議論された。脳死と死の関係には大きく3つの解釈がある。
三徴候説
心臓死こそが死という立場のこと。三徴候とは心停止、呼吸停止、瞳孔散大を指す。脳死臓器移植については移植否定派と、例外で認める違法性阻却派に分かれる。臓器移植法では脳死も死と認めるため、現在主流ではない考え。
脳死選択説
基本的に心臓死を死とするが、本人、家族が臓器移植を望んだ場合に限り脳死を死とする立場のこと。死の基準が2つ存在し統一性に欠ける問題がある。臓器移植法はこの立場を取る。
脳死一元論
脳死こそが死という立場のこと。 脳死=死が社会に浸透していない点や脳死判定の確実性に問題がある。
臓器移植の未来
近年、臓器移植や人工臓器はドナー不足や技術的課題等の壁にぶつかっている。そのため、細胞の再生能力を利用し臓器を作製する再生医学の研究に注目が集まっている。
インフレーション理論とは?わかりやすく5分で解説
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インフレーション理論とは、日本の物理学者佐藤勝彦やアメリカの物理学者グースらが提唱した、宇宙誕生直後に急膨張が起こったという仮説のこと。
背景
20世紀初頭、宇宙は不変(静止宇宙)と考えられていた。1917年、ドイツの物理学者アインシュタインが一般相対性理論で宇宙の記述を試みたが、静止宇宙とならなかったため、静止宇宙になるように万有斥力(宇宙項)を導入し辻褄を合わせた。
1922年、ソ連の物理学者フリードマンが、静止宇宙という前提を捨て一般相対性理論のアインシュタイン方程式を解いた(フリードマン方程式)。この式からは、宇宙は膨張し続けるか、膨張後に収縮するという2通りの宇宙モデルが導かれた。
膨張宇宙の観測
1929年、アメリカの天文学者ハッブルが赤方偏移の観測により、遠くの銀河ほど地球から速く遠ざかっていることを発見した(ハッブル法則)。これは宇宙の膨張を意味する。赤方偏移とは、観測者から遠ざかる光が波長の長い方へずれる現象のこと。
光は電磁波の一種で、電磁波は波長が短い順に、γ線、X線、紫外線、可視光線(紫系→赤系)、赤外線、電波となる。救急車のサイレン(音波)は、近づくと高く(波長が短く)、遠ざかると低く(波長が長く)聴こえる(ドップラー効果)。この効果は電磁波にも起こる。
つまり、遠ざかる天体(物質)の発する光は波長が伸びる。
ビッグバン宇宙論(火の玉宇宙論)と定常宇宙論
1931年、ベルギーの天文学者ルメートルが、宇宙は爆発で誕生したと発表した。1948年、ロシアの物理学者ガモフがルメートルの理論を発展させ、宇宙が爆発で誕生し高温高密度の状態から膨張と共に冷え、現在に至ったと主張した(火の玉宇宙論)。
同年、イギリスの天文学者ホイルらは、宇宙に火の玉宇宙論のような始まりはなく、新しい物質が常に生成されることで宇宙が膨張すると主張した(定常宇宙論)。 両者は対立し、ホイルが火の玉宇宙論をビッグバン(大ボラの意)と呼び、それが定着した。
宇宙マイクロ波背景放射の観測
1964年、アメリカの物理学者ペンジアスとウィルソンが、電波望遠鏡の電波(マイクロ波)雑音に悩まされていた。当初は、アンテナについた鳩の糞等機器側の異常を考えたが、最終的に雑音は宇宙から届くビッグバンの名残という結論に行き着いた。
宇宙誕生直後は非常に高温で、光が電子にぶつかり(トムソン散乱)、何も見えない状態だった。これが誕生から約38万年後に約3000Kまで冷えると、電子と陽子が原子になり、光が直進でき宇宙を照らすようになった。これを宇宙の晴れ上がりという。
あらゆる物質はその熱に応じた電磁波を出す(熱放射)。電磁波は熱い物質ほど波長が短い。宇宙の晴れ上がり時の光(約3000Kの物質が発する光)が、宇宙の膨張で波長が伸び約3Kのマイクロ波になった。これを宇宙マイクロ波背景放射(CMB)という。
なぜ過去の光が見えるのかというと、光の速度が有限のため。たとえば太陽光が太陽から地球に届くまで8分かかる。つまり、地球上では8分前の太陽を見ている。1978年、ペンジアスとウィルソンはCMBの発見でノーベル賞を受賞した。
インフレーション理論の登場
1981年、日本の物理学者佐藤勝彦やアメリカの物理学者グースらが、宇宙は誕生直後に急膨張し、その後高温になったとするインフレーション理論を発表した。この理論は、膨張をほぼ等速と考えた従来のビッグバン宇宙論に生じる諸問題を解決し、修正した。
地平線問題
宇宙の地平線(まだ光が届いていない距離)の外からくるCMBの温度がなぜか同じ約3Kになる問題のこと。熱は光速よりも速く伝わることができない。つまり、宇宙の地平線外からくるCMBの温度が同じになるのは不自然。
インフレーション理論では、小さな点が一気に10の43乗倍に急膨張したと考える。つまり、小さな点の時に温度が均一だったため、宇宙の地平線外まで急膨張しても地平線外の温度は同じになると考える。
平坦性問題
現在の宇宙空間はほぼ平坦だと分かっているが、これを実現するためには初期宇宙の条件(物質の密度等)がかなりシビアという問題のこと。少しでも条件がずれれば、宇宙は物質の重力によって収縮しつぶれるか、膨張速度が速すぎて銀河が形成されない。
インフレーション理論では、元々空間が曲がっていたとしても急膨張によって引き延ばされ平坦になると考える。
インフレーション理論の予言
インフレーション理論は、原始重力波の存在を予言している。原始重力波とは、宇宙誕生直後の急膨張により発生した時空の歪みの波のこと。光の観測では、宇宙の晴れ上がり以前を見ることができない。原始重力波は、宇宙の晴れ上がり以前に発生している。
つまり、原始重力波を直接観測できれば宇宙の起源に迫ることができる。そのため各国で研究が進められている。
フェルミのパラドックスとは?わかりやすく5分で解説
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フェルミのパラドックスとは、イタリアの物理学者フェルミが提起した、宇宙には無数の星があり地球外文明が存在する可能性が高いにもかかわらず、地球外知的生命(宇宙人)と人類が接触してないのはなぜかというパラドックスのこと。
背景
1950年、イタリアの物理学者フェルミが昼食中同僚に、宇宙人はどこにいるのか問いかけた(フェルミのパラドックス)。1960年、地球外知的生命探査(SETI)計画が始まった。SETIには、宇宙へ発信するアクティブSETIと宇宙から受信するパッシブSETIがある。
アクティブSETIには、1972-73年にNASAが打ち上げたパイオニア探査機の金属板、1974年にプエルトリコのアレシボ天文台が発信したアレシボメッセージ、1977年にNASAが打ち上げたボイジャー探査機のゴールデンレコード等がある。
パッシブSETIには、1977年にアメリカのビッグイヤー電波望遠鏡が受信したWow!シグナル等がある。これは、地球外文明が発した電波信号の可能性が指摘されている。
ドレイクの方程式
1961年、アメリカの天文学者ドレイクが、人類と接触できるほど高度な地球外文明の数を推定する方程式を考案した(ドレイクの方程式)。各変数は専門家の見解によって異なる。
ドレイクの方程式は、N=R*×fp×ne×fl×fi×fc×L(銀河系の高度な地球外文明の数=1年に誕生する恒星の数×恒星が惑星を持つ確率×生命の生存に適した惑星の数×生命が発生する確率×知的生命になる確率×高度な文明を持つ確率×高度な文明の持続年数)で表される。
宇宙人は存在し接触している
陰謀論
宇宙人との接触を国家が隠蔽しているという説。 UFOと結び付けて語られる。
古代宇宙飛行士説
古代の地球に宇宙人が飛来し文明を授けたとする説。世界の神話や遺跡に宇宙人の存在を匂わせるものが存在する。
ハンガリー人宇宙人説
ハンガリー人は宇宙人(火星人)という説。ハンガリー出身の科学者に優秀な人物が多いことから生まれたジョーク。
パンスペルミア説
人類の先祖(微生物)が隕石等によって宇宙から飛来したという説。宇宙人が意図的に地球に生命の種をまいたとする考えもある。
宇宙人は存在するが接触していない
動物園仮説
宇宙人によって地球が保護区に指定されているという説。高度な文明が地球の文明に影響を与えないように干渉してこないと考える。
プラネタリウム仮説
宇宙人によって地球や太陽系がスクリーンのようなもので覆われているという説。
シミュレーション仮説
我々は宇宙人によって作られたシミュレーションの世界にいるという説。
地球より高度な文明がない
地球文明が一番発展しているという説。確率的に宇宙で一番人口の多い星に生まれる可能性が高いため、我々が地球に生まれたということは地球文明が一番繁栄していると考える。
コストがかかる
星間飛行は非常にコストがかかるため行われていないという説。
伝わらない
地球と宇宙人のコミュニケーション方法が異なるため接触できていないという説。
届いていない
互いの文明に距離があるため、まだ通信が届いていないという説。
重力の強い惑星にいる
強い重力の惑星(スーパーアース)にいるため、宇宙に進出できていないという説。
海中にいる
海中にいるため宇宙に進出できていないという説。
宇宙を知らない
惑星の厚い大気や複数の太陽の影響で、宇宙を認識できていないという説。
休眠している
活動に適した温度まで宇宙が冷えるまで活動を停止しているという説。
興味がない
太陽系に興味がないという説。
自滅している
一定の発展を遂げた文明は、何らかの障害(The Great Filter)にぶつかり滅んでいるという説。 文明の発展は戦争や資源の枯渇、環境汚染、人工知能の暴走等を引き起こし自滅を招くため、文明が接触するレベルに達しないと考える。
破壊者がいる
一定の発展を遂げた文明は、より高い文明を持つ宇宙人によって滅ぼされているという説。資源は有限のため、乱獲によって枯渇する可能性がある(コモンズの悲劇)。そのため、一定の発展を遂げた文明はライバルを嫌う他者に滅ぼされると考える。
避けている
他文明との接触を危険と判断して避けているという説。
コンピュータの世界にいる
自ら作ったコンピュータ上の仮想世界にいるという説。仮想世界は理想の世界のため、わざわざ現実世界で活動することはないと考える。
宇宙人は存在しない
レアアース仮説
地球における生命の誕生と知的生命(人類)への進化は稀な現象という説。太陽との距離、安定した軌道、磁場の存在、木星による隕石の吸収、地軸の傾き、月による潮汐、大量絶滅からの生還等の奇跡的な条件の重なりは地球でしか起きていないと考える。
コンピュータ将棋とは?わかりやすく5分で解説
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コンピュータ将棋とは、将棋の対戦を目的としたコンピュータプログラムのこと。
背景
チェスや将棋、囲碁のように二人で行い、利害の合計が0(勝ち1、負け-1、引き分け0)で、指し手が有限で、偶然の要素がなく、相手の選択が常に把握できるゲームを二人零和有限確定完全情報ゲームという。
このゲームは理論上先手必勝、後手必勝、引き分けのいずれかに決定する。但し一局の選択肢はチェスで10の120乗、将棋で10の220乗、囲碁で10の360乗と宇宙の原子の数10の80乗より多い。そのため、いずれも解明には至っていない。
探索と評価関数
将棋は、形勢を判断する大局観と選択肢を考える読みで指し手を決める。コンピュータ将棋において、大局観と読みに相当するものが評価関数と探索になる。
評価関数
持ち駒の数や駒の配置、効き、手番等を点数化し合計した関数のこと。評価関数で特定の局面を計算したものを評価値という。評価値が高いほど形勢が良いと判断する。
探索
ある局面の有効な指し手を探す技術のこと。将棋は選択肢が膨大なため、限られた時間で効率よく探索を行う必要がある。基本的な探索手法にミニマックス法がある。これは評価値が相手の手番で最小、自分の手番で最大になるように探索する手法のこと。
たとえば選択肢が2つずつあり2手目まで探索する時、2手目(相手番)には4つの選択肢となる。これはトーナメント表のような図(ゲーム木)で表せる。2手目の局面の評価値がそれぞれ左から1,3,5,7だった時、1と3の最小1と、5と7の最小5が指し手の候補となる。
次に1と5から最大を選択する。つまり評価値5の局面を目指す指し手に決定する。この時、もし探索領域外(評価値5の局面の先)に突然不利な局面が現れるとしてもそれを読むことはできない。これを水平線効果という。
Bonanzaの登場
2005年、化学者の保木邦仁が将棋ソフトBonanzaを開発した。Bonanzaは以下に示す様々なアイデアによって、2006年ライバルが高スペックPCを使用する中、ノートPCで世界コンピュータ将棋選手権に初出場し優勝した。
ボナンザメソッド
評価関数を自動で調整する手法のこと。それまでは開発者が人力で評価関数を調整していた。Bonanzaはプロの棋譜(教師データ)から、プロの指し手を正解として評価関数を自動で調整した。このように正解を提示して学習させる方法を教師あり学習という。
3駒関係
玉と他2駒の位置関係で局面を捉える評価関数のこと。勝利の三角形ともいう。
全幅探索
広く浅く探索する手法のこと。元々コンピュータチェスで採用されていた手法だが、将棋は選択肢が多く機能しないと考えられていたため、それまで狭く深く読む選択探索が採用されていた。全幅探索は、選択探索が捨てていた有効な指し手に光を当てた。
技術的改良
Bonanzaの登場以降、様々な技術が開発され飛躍的に棋力(強さ)が向上した。
KPPT
玉(K)と他2駒(PとP)の3駒関係に手番(T)を加えた評価関数のこと。他にも王と玉と他1駒と手番のKKPTや、駒の効き(E)を加えたKPE等がある。
次元下げ
3駒関係を盤面の相対位置で考え評価関数に反映させる手法のこと。それまで3駒関係は絶対位置で考えていたため、プロの棋譜に現れにくい局面(入玉等)を苦手としていた。次元下げにより学習に利用できる局面が増加し、弱点の克服と棋力向上につながった。
枝刈り
特定の局面を探索対象から外し、効率を上げる手法のこと。たとえばミニマックス法は、探索中の情報から論理的に最大や最小をとらないと分かる局面も探索する。この無駄な探索を省く手法をαβ法という。他にも様々な枝刈り方法がある。
自己対局
コンピュータが自身のみでする対局のこと。プロの棋譜のみでは教師データが少ないため、自己対局を繰り返し増やした。このように、独力のみで学習する行為を強化学習という。
雑巾絞り
浅く探索した時の評価値を、深く探索した時の評価値に近づけるように評価関数を調整する手法のこと。発展形として勝敗結果を調整に取り入れる手法もある。強化学習の一種。
floodgate
2008年インターネット上に開設されたコンピュータ将棋の対局場のこと。対局の棋譜が入手でき教師データに利用できる。
プロとの対局
2013年、コンピュータとプロ棋士による団体戦、第2回将棋電王戦が開催されプロ棋士が初めて敗北した。2017年、名人佐藤天彦が2連敗したのを最後にコンピュータとの対局は行われていない。
近年の開発
2017年、アメリカの企業Googleがディープラーニングを行うプログラムAlphaZeroを開発し、3日間の学習で将棋ソフトトップのelmoに勝ち越したと発表した。2018年、日本でもディープラーニング評価関数(NNUE)が開発され効果を発揮している。
記憶のバイアスとは?わかりやすく5分で解説
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記憶のバイアスとは、記憶に関わる認知バイアスのこと。認知バイアスとは、何かを認知する際、事実や印象が歪んだり偏ったりする傾向のこと。
以下にその種類を示す。
記憶の定着について
Humor effect
面白い情報の方が記憶が定着する傾向のこと。
Von Restorff effect
目立つ情報の方が記憶が定着する傾向のこと。
Bizarreness effect
突飛な情報の方が記憶が定着する傾向のこと。
望ましい困難
苦労して覚えた方が記憶が定着する傾向のこと。
自己参照効果
自分に関連付けた方が記憶が定着する傾向のこと。
Self-relevance effect
自分に関係のある情報の方が記憶が定着する傾向のこと。
Generation effect
受動的な情報(見聞き)よりも、能動的な情報(読み書き)の方が記憶が定着する傾向のこと。
Picture superiority effect
文字よりも、画像の方が記憶が定着する傾向のこと。
系列位置効果
中間よりも、最初と最後の方が記憶が定着する傾向のこと。最初の記憶力の上昇を初頭効果、最後の記憶力の上昇を新近効果という。
Modality effect
視覚よりも、聴覚の方が最後の記憶が定着する(新近効果が得られる)傾向のこと。
間隔効果
一度に記憶するよりも、間隔をあけた方が記憶が定着する傾向のこと。
テスト効果
読み書きするよりも、テストをした方が記憶が定着する傾向のこと。
ツァイガルニク効果
達成した出来事よりも、中断した出来事の方が記憶が定着する傾向のこと。
Dual code and multimedia effects
単一の方法よりも、複数の方法(文字と画像、視覚と聴覚等)で覚える方が記憶が定着する傾向のこと。
処理水準効果
丸暗記よりも、理解して覚えた方が記憶が定着する傾向のこと。
幼児期健忘
3歳以前の記憶が定着しない傾向のこと。
グーグル効果
簡単に得られる情報の記憶が定着しない傾向のこと。
Next-in-line effect
自分の順番直前の記憶が定着しない傾向のこと。
凶器注目效果
犯人が凶器を持っていた場合、凶器以外(人相、着衣)の記憶が定着しない傾向のこと。
他人種効果
同人種よりも、他人種の顔の方が記憶が定着しない傾向のこと。
思い込みについて
Illusory truth effect
初めて聞く情報よりも、知っている情報の方が正しいと思い込む傾向のこと。
選択支持バイアス
自分の選択が正しかったと思い込む傾向のこと。
一貫性バイアス
ある人の態度や行動を、過去からそうだったように思い込む傾向のこと。
境界拡張
画像を思い出す時、画像外の映像まで見たと思い込む傾向のこと。
テレスコーピング現象
古い記憶は実際よりも最近の出来事のように、最近の記憶は実際よりも古い出来事のように思い込む傾向のこと。
後知恵バイアス
結果を知ってから予測可能だったと思い込む傾向のこと。
クリプトムネシア
見聞きした記憶を忘れた後、意図せず自分で考え出したと思い込む傾向のこと。
Egocentric bias
実際よりも、自分の評価を高いものと思い込む傾向のこと。
無意識的転移
事件とは別の場面で見た人を犯人と思い込む傾向のこと。
Change bias
努力して変化した時、変化前を実際よりもひどい状態だったと思い込む傾向のこと。
Leveling and sharpening
記憶した情報の細部が失われたり、一部が強調される傾向のこと。
誘導情報効果 または Suggestibility
記憶した情報と異なる情報を与えられると、記憶が書きかえられる傾向のこと。
ポジティブ効果
高齢者が過去の記憶を肯定的に捉える傾向のこと。
Rosy retrospection
当時感じていたよりも、過去の記憶を肯定的に捉える傾向のこと。
想起について
文脈効果
記憶した時の環境(場所、天気等)に近い方が多く思い出す傾向のこと。
レミニセンスバンプ
10~30歳頃の記憶を多く思い出す傾向のこと。
Gender differences in eyewitness memory
目撃者が同性の方が多く思い出す傾向のこと。
Mood congruent memory bias
その時の気分や感情と一致する記憶を思い出す傾向のこと。
Suffix effect
情報の最後に無関係な言葉が入ると、直前の情報を思い出せなくなる傾向のこと。
Fading affect bias
良い記憶よりも、悪い記憶の方が早く忘れる傾向のこと。
その他
Verbatim effect
言葉を一言一句ではなく要点で記憶する傾向のこと。
List-length effect
情報が少ないよりも、情報が多い方が記憶できる絶対数が減る傾向のこと。
ピークエンドの法則
思い出を絶頂期と終わり方のみで判断する傾向のこと。
CP対称性の破れとは?わかりやすく5分で解説
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CP対称性の破れとは、粒子と反粒子が非対称な振る舞いをする事象のこと。
または、粒子の電荷(C)と空間(P)を反転(CP変換)させた反粒子の世界で、粒子の世界と同じ物理法則が成り立たないことをいう。現在の宇宙がほとんど反物質のない物質優勢宇宙になった理由を説明するために必要な条件の1つ。
素粒子について
物質の最小単位を素粒子という。以下3種に分類される。
ゲージ粒子
基本相互作用を伝える素粒子のこと。電磁気力を伝える光子(フォトン)、弱い力を伝えるウィークボソン、強い力を伝えるグルーオンの3種と、未発見だが重力を伝える重力子(グラビトン)があるとされる。
ヒッグス粒子
物質に質量を与える素粒子のこと。
フェルミ粒子(フェルミオン)
物質を形作る素粒子のこと。陽子や中性子等を構成するクォークと電子等のレプトンに分かれる。クォーク同士が強い力で結びついたものをハドロンという。ハドロンには、クォークと反クォークからなる中間子と、3つのクォークからなるバリオンがある。
反粒子について
粒子には電荷が反対の反粒子が必ず存在する。反粒子が粒子に遭遇すると、互いに衝突し消える(対消滅)。この時すべての質量がエネルギーに変わる。また、高いエネルギーがあると粒子と反粒子がペアで生まれる(対生成)。
基本相互作用について
自然界に働く力は電磁気力、弱い力、強い力、重力の4つと考えられている。これを基本相互作用という。
電磁気力
原子核と電子や、原子同士を結び付け原子や分子を作る力のこと。電気と磁気の力。
弱い力
強い力
重力
物質同士が引かれ合う力のこと。
背景
1928年、イギリスの物理学者ディラックが、特殊相対性理論と量子力学を結び付けるディラック方程式を発表し、電子の反粒子(陽電子)の存在を予言した。1932年、アメリカの物理学者アンダーソンが陽電子を発見した。
1933年ディラックが原子理論における新しい理論形式の発見で、1936年アンダーソンが陽電子の発見でノーベル賞を受賞した。
対称性の破れの発見
1956年、中国の物理学者ヤンとリーがK中間子のP対称性の破れを予言した。P対称性の破れとは、粒子を空間反転(P変換)させた時、反転前後で同じ物理法則が成り立たないことをいう。同年、中国の物理学者ウーがK中間子のP対称性の破れを観測した。
1964年、アメリカの物理学者フィッチとクローニンが、K中間子のCP対称性の破れを観測した。CP対称性の破れとは、粒子の電荷(C)と空間(P)を反転(CP変換)させた反粒子の世界で、粒子の世界と同じ物理法則が成り立たないことをいう。
1957年ヤンとリーがパリティ(P)についての研究で、1980年フィッチとクローニンがK中間子崩壊におけるCP対称性の破れの発見でノーベル賞を受賞した。
サハロフの3条件
宇宙誕生初期は、物質と反物質が同数存在していたとされる。しかし、現在の宇宙はほとんど物質で構成されている。それでは、いつどのように物質と反物質に偏りが生じたのか。これをバリオン数生成問題(バリオジェネシス)という。
バリオン数とはクォークを1/3、反クォークを-1/3と数える量のこと。つまり、宇宙誕生初期のバリオン数はゼロとなる。1967年、ロシアの物理学者サハロフが、物質優勢宇宙となるために必要な条件をまとめた(サハロフの3条件)。
バリオン数の非保存
クォークと反クォークの量に偏りが生じる必要がある。クォークと反クォークが対生成と対消滅を繰り返しバリオン数が保存される(変わらない)なら、物質優勢宇宙は生まれない。
CおよびCP対称性の破れ
粒子と反粒子の振る舞いが互いに異なる必要がある。粒子と反粒子が同じ物理法則に従うなら互いの量は偏らず、物質優勢宇宙は生まれない。
非平衡状態
反応が一方向の必要がある。平衡状態ではバリオン数が増える反応と減る反応が同じだけ起こるため、物質優勢宇宙は生まれない。
小林益川理論
1973年、日本の物理学者小林誠と益川敏英が、当時3つしか発見されていなかったクオークが6つあればCP対称性の破れが説明できると発表した(小林益川理論)。その後、1994年までに予言した3つのクォークが発見された。
2001年、B中間子のCP対称性の破れが観測された。2008年小林と益川は、クォークが3世代以上ある事を予言するCP対称性の破れの起源の発見によってノーベル賞を受賞した。クォークは性質と質量の違いによって、6種類が3世代に分類される。
しかし、小林益川理論で求めた物質の数は実際の物質の数に10桁足りない。そのためCP対称性の破れは、小林益川理論が対象とするクォークだけでなく、レプトンでも起こると考えられ研究が進められている。