なにかの知識

なにかの知識

5分で学べる無駄知識

インフレーション理論とは?わかりやすく5分で解説

インフレーション理論とは、日本の物理学者佐藤勝彦アメリカの物理学者グースらが提唱した、宇宙誕生直後に急膨張が起こったという仮説のこと

f:id:gmaj7dmaj7gmaj7dmaj7:20181124055532j:plain

背景 

20世紀初頭、宇宙は不変(静止宇宙)と考えられていた。1917年、ドイツの物理学者アインシュタイン一般相対性理論で宇宙の記述を試みたが、静止宇宙とならなかったため、静止宇宙になるように万有斥力(宇宙項)を導入し辻褄を合わせた。

1922年、ソ連の物理学者フリードマンが、静止宇宙という前提を捨て一般相対性理論アインシュタイン方程式を解いた(フリードマン方程式)。この式からは、宇宙は膨張し続けるか、膨張後に収縮するという2通りの宇宙モデルが導かれた。

膨張宇宙の観測

1929年、アメリカの天文学者ハッブル赤方偏移の観測により、遠くの銀河ほど地球から速く遠ざかっていることを発見した(ハッブル法則)。これは宇宙の膨張を意味する。赤方偏移とは、観測者から遠ざかる光が波長の長い方へずれる現象のこと。

光は電磁波の一種で、電磁波は波長が短い順に、γ線、X線、紫外線、可視光線(青系→赤系)、赤外線、電波となる。救急車のサイレン(音波)は、近づくと高く(波長が短く)、遠ざかると低く(波長が長く)聴こえる(ドップラー効果)。この効果は電磁波にも起こる。

つまり、遠ざかる天体(物質)の発する光は波長が伸びる

ビッグバン宇宙論(火の玉宇宙論)と定常宇宙論

1931年、ベルギーの天文学者ルメートルが、宇宙は爆発で誕生したと発表した。1948年、ロシアの物理学者ガモフがルメートルの理論を発展させ、宇宙が爆発で誕生し高温高密度の状態から膨張と共に冷え、現在に至ったと主張した(火の玉宇宙論)

同年、イギリスの天文学者ホイルらは、宇宙に火の玉宇宙論のような始まりはなく、新しい物質が常に生成されることで宇宙が膨張すると主張した(定常宇宙論)。 両者は対立し、ホイルが火の玉宇宙論をビッグバン(大ボラの意)と呼び、それが定着した。

宇宙マイクロ波背景放射の観測

1964年、アメリカの物理学者ペンジアスとウィルソンが、電波望遠鏡の電波(マイクロ波)雑音に悩まされていた。当初は、アンテナについた鳩の糞等機器側の異常を考えたが、最終的に雑音は宇宙から届くビッグバンの名残という結論に行き着いた。

宇宙誕生直後は非常に高温で、光が電子にぶつかり(トムソン散乱)、何も見えない状態だった。これが誕生から約38万年後に約3000Kまで冷えると、電子と陽子が原子になり、光が直進でき宇宙を照らすようになった。これを宇宙の晴れ上がりという。

あらゆる物質はその熱に応じた電磁波を出す(熱放射)。電磁波は熱い物質ほど波長が短い。宇宙の晴れ上がり時の光(約3000Kの物質が発する光)が、宇宙の膨張で波長が伸び約3Kのマイクロ波になった。これを宇宙マイクロ波背景放射(CMB)という。

なぜ過去の光が見えるのかというと、光の速度が有限のため。たとえば太陽光が太陽から地球に届くまで8分かかる。つまり、地球上では8分前の太陽を見ている。1978年、ペンジアスとウィルソンはCMBの発見でノーベル賞を受賞した。 

インフレーション理論の登場

1981年、日本の物理学者佐藤勝彦アメリカの物理学者グースらが、宇宙は誕生直後に急膨張し、その後高温になったとするインフレーション理論を発表した。この理論は、膨張をほぼ等速と考えた従来のビッグバン宇宙論に生じる諸問題を解決し、修正した。

地平線問題

宇宙の地平線(まだ光が届いていない距離)の外からくるCMBの温度がなぜか同じ約3Kになる問題のこと。熱は光速よりも速く伝わることができない。つまり、宇宙の地平線外からくるCMBの温度が同じになるのは不自然。

インフレーション理論では、小さな点が一気に10の43乗倍に急膨張したと考える。つまり、小さな点の時に温度が均一だったため、宇宙の地平線外まで急膨張しても地平線外の温度は同じになると考える。

平坦性問題

現在の宇宙空間はほぼ平坦だと分かっているが、これを実現するためには初期宇宙の条件(物質の密度等)がかなりシビアという問題のこと。少しでも条件がずれれば、宇宙は物質の重力によって収縮しつぶれるか、膨張速度が速すぎて銀河が形成されない。

インフレーション理論では、元々空間が曲がっていたとしても急膨張によって引き延ばされ平坦になると考える。

インフレーション理論の予言

インフレーション理論は、原始重力波の存在を予言している。原始重力波とは、宇宙誕生直後の急膨張により発生した時空の歪みの波のこと。光の観測では、宇宙の晴れ上がり以前を見ることができない。原始重力波は、宇宙の晴れ上がり以前に発生している。

つまり、原始重力波を直接観測できれば宇宙の起源に迫ることができる。そのため各国で研究が進められている。