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CRISPR/Cas9(クリスパーキャスナイン)とは?わかりやすく5分で解説

CRISPR/Cas9(クリスパーキャスナイン)とは、フランスの生物学者シャルパンティエアメリカの生物学者ダウドナが開発した、従来方法にくらべ圧倒的に簡便なゲノム編集技術のこと

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背景 

人類は数千年前から品種改良を行ってきた。これは、自然の突然変異によって偶然現れた形質を人為的に交配させ、望んだ形質の品種を作るというもの。たとえば観賞用の鳩では、羽の色や筋肉の付き方等が異なる品種を作った。

この鳩の人為的な形質の選択は、イギリスの博物学ダーウィン自然選択説を着想するきっかけの1つとなった。自然の突然変異は発生頻度が低く、発現する変異も選べなかったため、初期の品種改良には時間がかかった

人為突然変異の発見 

1926年、アメリカの遺伝学者マラーが、生物にX線をあてると突然変異が誘発されること(人為突然変異)を発見した。これにより品種改良は加速したが発現する変異は選べなかった。1946年、彼はX線照射による突然変異体発生の発見でノーベル賞を受賞した。

DNAの解明

1950~70年代DNAの主な働きが解明された。DNAはアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4つの物質の並び方(塩基配列)で遺伝情報を伝える。またAとT、GとCはペアになる性質(相補性)があり、はしごをねじったような二重らせん構造になる。

遺伝子組み換え技術の登場

1968年、スイスの微生物学者アーバーとアメリカの微生物学者スミスが、特定の塩基配列を切断する酵素(制限酵素)を発見した。1973年、これらのツールを用いアメリカの遺伝学者コーエンと生化学者ボイヤーが、遺伝子組み換え技術を確立した。

この技術によって、不要な遺伝子を無効化(ノックアウト)したり、他の生物の遺伝子(外来遺伝子)を目的の生物に導入し、望んだ形質を発現できるようになった。たとえば、パンジーの青い色素の遺伝子から青いバラを作った。

1978年、アーバーとスミスが制限酵素の発見等の功績でノーベル賞を受賞した。

遺伝子組み換え技術の制約

制限酵素は4~8塩基程度しか認識できないため、標的以外に同じ配列が存在すると同様に切断してしまう。これらの理由により、遺伝子組み換えの成功率は万に一つレベルで極めて低い。さらに種類によって標的配列が決まり、任意の配列を切断できない

ゲノム編集の登場 

塩基は特定のタンパク質と結合する性質がある。つまり、標的配列に合わせてタンパク質を並べ、そこに制限酵素を加えたものを作れば任意の配列の切断が可能になる。この考えをもとに1996年にZFN、2010年にTALENが誕生した。

このように、任意に塩基配列を編集する技術をゲノム編集という。ゲノムとは、生物が持つDNAのすべての遺伝情報のこと。

CRISPR/Cas9の開発 

1987年、日本の生物学者石野良純が、細菌のDNAに繰り返し現れる塩基配列(CRISPR)を発見した。2005年、デンマークの食品会社ダニスコの研究員が、細菌のCRISPRに挟まれたDNAと、細菌が以前感染したウイルスのDNAの一部が一致することに気付いた。

その後CRISPRは細菌の免疫機能だと突き止められた。細菌は感染したウイルスのDNAの断片をCRISPR間に取り込む。後に同じウイルスが侵入すると、CRISPR間のDNAをコピーしたガイドRNAがウイルスのDNAを探し、Cas9酵素がそれを切断(破壊)する

2012年、CRISPRを応用しフランスの生物学者シャルパンティエアメリカの生物学者ダウドナが、CRISPR/Cas9を開発した。CRISPR/Cas9は、相補性を利用し標的配列を探すガイドRNAと、標的配列を切断するCas9酵素で構成される。

CRISPR/Cas9の特徴

CRISPR/Cas9で用いるガイドRNAは、ZFNやTALENで用いるタンパク質にくらべ容易に設計できる。これにより高度な技術は使わず、安価で簡単に誰でもゲノム編集ができるようになり、医療、農業、産業等の分野で爆発的に広まった。

一方、認識できる配列が20塩基と短く、数個のミスマッチを許容するため、標的以外を切断することがある(オフターゲット効果)。これは意図しない突然変異のリスクとなる。ちなみにTALENは、30~40塩基を認識できオフターゲット効果が起きにくい。

技術以外の問題

遺伝子ドライブ

特定の遺伝子を急速に拡散させる技術のこと。CRISPR/Cas9を用いたマラリアを媒介する蚊の絶滅方法等のアイデアがある。環境への影響が問題視されている。

デザイナーベビー

受精卵の段階で遺伝子操作が行われた人間のこと。2018年、中国の生物物理学者ハーが、CRISPR/Cas9を用い世界初のデザイナーベビー(双子のルルとナナ)を誕生させた。倫理的に問題視されている。