特許権侵害とは?わかりやすく5分で解説
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特許権侵害とは、非権利者が権利者に無断で事業として特許を使用する行為のこと。
特許権とは
特許権とは自らの発明を公開する代わりに、その発明を一定期間独占できる権利のこと。これには、発明を保護することで健全な産業の発展を図る狙いがある。発明は特許庁に登録することで特許となり、権利者に特許権が発生し20年間保護される。
特許は、今までにないもの(新規性あり)で簡単に思いつかないもの(進歩性あり)でなくてはならない。たとえば、既に販売しているものや単なる技術の組み合わせは特許とならない。
特許権侵害の判断
特許権侵害の判断は、特許出願時に添付した特許請求の範囲(クレーム)をもとに行う。たとえばあんぱんのクレームが、小麦粉を発酵させた生地(①)を丸形に成形(②)し、中に小豆餡を含む(③)ことを特徴とするパンだったとする。
ここで、①②③のようにクレームを技術ごとに分けたものを構成要件という。基本的には、構成要件すべてを満たすものだけが特許権侵害となる。そのため、角形のあんぱんは特許権侵害とならない。
但し相違点がその発明の本質でない等、一定の条件を満たす場合は特許権侵害となり得る(均等論)。その他、新規性や進歩性の欠如による特許無効の是非や、出願前の販売による先使用権の有無等が争点となることもある。
ちなみに権利侵害が疑われる製品や方法のことをイ号という。
主な手続
特許権紛争の主な手続を以下に示す。
特許権侵害訴訟
特許権侵害の救済を裁判所に求める裁判のこと。一審の地裁の判決に不服のある場合は高裁へ控訴、最高裁へ上告もできる。
債務不存在確認訴訟
自身が他者の権利を侵害していないことの確認を裁判所に求める裁判のこと。
無効審判
特許の利害関係者が、他者の特許の無効を特許庁に求める審判のこと。
審決取消訴訟
特許庁の判断した審決の取消を裁判所に求める裁判のこと。
訴訟事例
テキサスインスツルメンツx富士通
1991年、富士通がテキサスインスツルメンツの特許権を侵害していないことの確認のため、債務不存在確認訴訟を行った。対象は、半導体基板に回路素子を配置した集積回路の特許となる(キルビー275特許)。
争点はクレームにある「電子回路用の半導体装置」と「距離的に離間した複数の回路素子」をどう解釈するかという点。簡単に言うと、単一の装置として回路素子がすべて基板に含まれているか、それらの素子が物理的に離れているかということ。
イ号は、キャパシタが基板外にありほとんどの回路素子が接触、重合もしくは近接していた。1994年、地裁は特許権侵害なしと判断した。1997年、高裁は同様の特許から分割されたキルビー275特許自体を無効と判断した。
以降、特許庁の審決を待たず裁判所が特許無効の是非を下せるようになった。
越後製菓x佐藤食品
2009年、越後製菓が佐藤食品に対し特許権侵害訴訟を起こした。対象は、餅の側面に切り込みを入れることで型崩れを防ぐ特許となる。イ号は上面に十字、側面に1列の切り込みが入る。
争点はクレームにある「載置底面又は平坦上面ではなくこの小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に,…一若しくは複数の切り込み」をどう解釈するかという点。簡単に言うと、切込みが側面にある発明なのか側面のみにある発明なのかということ。
前者の場合は特許権侵害となる。また佐藤食品は、越後製菓の特許出願前にイ号を販売していたと先使用権を主張し、無効審判請求も行った。2012年、高裁は特許権侵害を認め、佐藤食品に対し商品の製造販売禁止と約8億円の損害賠償を命じた。
パイロットx三菱鉛筆
2011年、パイロットが三菱鉛筆に対し特許権侵害訴訟を起こした。対象は、付属の摩擦体で文字をこすると、摩擦熱でインキが無色になる筆記具の特許となる。2012年、パイロットが結審前に請求を放棄した(理由は非公表)。
2014年、三菱鉛筆がパイロット特許の無効審判請求を行った。2016年、特許庁がパイロット特許を無効と判断したことで、パイロットが審決取消訴訟を行った。争点は、特許に進歩性があるかという点。
2017年、高裁は筆記具に摩擦体を付属させる発想は進歩性があると判断しパイロット特許を認めたため、パイロットがイ号の販売停止仮処分を申し立てた。2018年、和解が成立した。
カプコンxコーエーテクモ
2014年、カプコンがコーエーテクモに対し特許権侵害訴訟を起こした。対象は、前作ディスクを読み込むとコンテンツが追加される特許(A特許)と、振動でプレイヤーに敵等の情報を知らせる特許(B特許)となる。
争点は、特許に新規性があるかという点。特にA特許については、ファミコン時代から他社で同様のシステムが存在していた。2019年、高裁は2件とも特許権侵害を認めコーエーテクモに対し約1.4億円の損害賠償を命じた。