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人工妊娠中絶とは?わかりやすく5分で解説

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人工妊娠中絶とは、人工的に妊娠を終わらせ胎児の生命を奪う処置のこと

以降、便宜上人口妊娠中絶を中絶と表記する。

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日本の法律

日本において中絶は堕胎罪で処罰される。但し、中絶に堕胎罪が適用されることはほぼない。なぜなら、母体保護法によって一定の条件下での中絶が認められているため。このように、本来ならば適用される処罰が回避される理由を違法性阻却事由という。

母体保護法では、胎児が母体外で生命を保持できない時期において、妊娠の継続が身体的または経済的な理由により母体の健康を著しく害するおそれのある場合や、強姦被害等の場合に、指定医師による中絶を認めている。

日本ではこの経済的な理由を拡大解釈することで、安易に中絶が行える。中絶が認められる時期は、前身の旧優生保護法施行時は妊娠8か月だったが、医学の進歩により徐々に短縮され今日では満22週未満となる

法的な手続きとしては、妊娠12週以降の中絶の場合にのみ役所へ死産届を提出する必要があるが、戸籍には残らない。

世界の状況

ほとんどの国が条件付きでの中絶を認めている。

アメリ

1973年、アメリ最高裁は女性の権利を侵害するとして、中絶を規制する法律を違憲無効とした(ロウ対ウェイド判決)。しかし、今日でも中絶反対派(プロライフ)と中絶擁護派(プロチョイス)の対立は激しく、大統領選にも影響を与えている

またプロライフの活動により各州で中絶を規制する法律が成立している。たとえばハートビート法は、胎児の心音が確認できる場合の中絶を禁止するというもの。心音は妊娠6週目程度で確認できるため、実質は中絶禁止法といえる。

さらにプロライフによる妨害行為(担当医師の殺害や放火等)が問題となっている。

フランス

1975年、ヴェイユ法が成立し中絶が女性の権利として認められた。1993年、中絶の妨害を規制するネイエルツ法が成立した。

中国

性別選択を目的とした中絶を除き合法とされる。

エルサルバドル

いかなる場合においても中絶を禁止している。中絶を行った場合は罪に問われる。

中絶の方法

中絶の方法は薬と外科手術の大きく2種類に分かれる。

初期中絶(妊娠12週未満)の場合、主にホルモンの働きを抑える薬ミフェプリストンと、子宮を収縮させる薬ミソプロストールによって人工的に流産を起こさせる。欧米では一般的だが、日本では未承認薬もしくは適応外薬となり中絶には使用されない

中期中絶(妊娠12週以降)の場合、主に陣痛を誘発する薬プレグランジンによって人工的に流産を起こさせる。これは日本でも行われている。

外科手術

器具を用いて子宮内容物をかきだす掻爬法(そうはほう)と、機械を用いて子宮内容物を吸い出す吸引法がある。日本の初期中絶において一般的な方法となる。WHOは安全面で掻爬法よりも薬物や吸引法を推奨している。

中絶の問題点

世界中でプロライフとプロチョイスが激しく対立している。たとえばキリスト教カトリック教会や福音派はプロライフに属し中絶を殺人と主張する。一方フェミニズム団体はプロチョイスに属し、中絶は女性の権利と主張する。

ちなみに聖書に中絶禁止の文言はない。主な論点を以下に示す。

生命の選択の是非

出生前診断によって、胎児の性別や障害の有無を理由に中絶が行われている(選択的中絶)。たとえば中国では出生前性別診断による中絶は違法だが、実際は一人っ子政策によって女児の中絶が行われた。日本でも障害児の経済的理由による中絶が行われている。

このような中絶に対し障害者団体は障害者差別だとして反対の立場をとる。

胎児に権利はあるか

カトリック教会は、人間は受胎の瞬間に誕生するため中絶は殺人となり許されないと主張する。これに対し、アメリカの哲学者トゥーリーは生物としてのヒトと、意識や理性を持つ人格(パーソン)を区別し、パーソンのみが人間の権利を持つとした(パーソン論)

これは、権利が本人の欲求なくして生まれないと考えるため。パーソン論では、パーソンではない胎児に生存権はなく中絶は行えると考える。しかし、この考えでは意思疎通のできない重度障害者等も人間ではないということになる。

また、胎児が権利を獲得する時期があいまいという指摘がある。たとえば日本で中絶が認められる時期は医療技術に依存している。

誰の権利が優先されるか

アメリカの哲学者トムソンは、母親の自己決定権が胎児の生存権よりも優先されると主張した。彼は、もし腎臓病で瀕死のヴァイオリニストのために勝手にあなたの腎臓がつながれた場合、その接続を断つ権利はヴァイオリニストではなくあなたにあると考えた。

バイオリニストは胎児、あなたは妊婦のたとえとなる。彼は、胎児の生存権の侵害という主張は中絶反対の理由として不十分とした。但し、これは意図せず不自由になること、つまり強姦被害や母体の健康を害す場合を想定している。