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カロリックとは?わかりやすく5分で解説

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カロリックとは、かつて熱の正体と考えられていた物質のこと

イギリスの物理学者ジュールらが発見した熱力学第1法則(エネルギー保存則)により存在が否定され、現代物理学では取り扱われなくなった概念。

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背景

古代ギリシアの哲学者アリストテレスは、この世界が火、空気、水、土の四元素で構成される地上と、アイテール(第五元素,エーテル)で構成される天空から成ると考えた。このように、当時火は物質と考えられていた。

17世紀頃、温度計の開発・発展に伴い熱の研究が活発化した。当時、熱を物質と考える熱物質説と熱を粒子の運動と考える熱運動説が対立していた。今日では熱運動説が正しいとされるが当初は熱物質説が優勢だった

フロギストン説の提唱

1697年、ドイツの化学者シュタールがフロギストン説を提唱した。フロギストン説とは、物質の燃える現象(燃焼)を燃素(フロギストン)の放出で説明する熱物質説のこと。つまり、フロギストンを含む物質が可燃物になると考える。

この説は、金属を燃焼させると金属からフロギストンが放出され灰が残ると考える。この説は広く受け入れられたが問題もあった。それは金属を燃焼させると質量が増加する点。この現象は今日、金属に酸素が結びつく(酸化する)ためと説明される。

これに対し、当時はフロギストンが負の質量を持ち放出されることで重くなるとした。この負の質量という考えは、暖かい空気が上にたまること等から普通に受け入れられた。しかし、それでは反対に木が燃焼によって軽くなることを説明できなかった。

カロリック説の登場

1774年、フランスの化学者ラボアジエが、燃焼による金属の質量増加は金属が空気と結合するためと主張した。彼は密閉容器内で金属を燃焼させ、燃焼によって金属単体の質量は増加しても容器全体の質量が変わらないことを発見した(質量保存の法則)。

その後、彼はカロリック説を提唱しフロギストン説を不要とした。カロリック説とは、空気を空気の基と熱素(カロリック)からなると考え、それらの作用で温度変化を説明する熱物質説のこと。つまり、温度は物質に含まれるカロリックの量の違いと考える。

この説は、金属を燃焼させると金属と空気の基が結合し灰となり、木を燃焼させると木と空気の基が結合しガスと灰となり、どちらも空気から遊離したカロリックにより熱が生じると考える。

断熱膨張の研究

当時、温度の出入りのない密閉容器内の気体を膨張(断熱膨張)させた時、気体の温度が下がることが知られていた。この現象は今日、エネルギー(熱)が仕事(膨張)に使われるためと説明される。これに対し、当時は比熱変化理論と比熱・潜熱理論が対立した。

比熱変化理論

比熱変化理論とは、断熱膨張すると気体自身が蓄えることのできるカロリック量(熱容量)が増加し、周囲のカロリックを奪うために温度が低下するという説のこと

比熱・潜熱理論

比熱・潜熱理論とは、断熱膨張すると一部のカロリックの結合が強くなり温度変化に影響を与えない潜熱となるため、温度が低下するという説のこと

ランフォードの実験

アメリカの科学者ランフォードがカロリック説を否定した。彼は、大砲の砲身を削る際の熱が無尽蔵に発生することに気づいた。そこで、その機械を水中に沈め水が沸騰するほどの熱の発生を確認した。彼はその熱の正体を摩擦による熱運動だと考えた。

もし熱の正体がカロリックなら、空気の少ない水中でどこからカロリックが供給されるのか説明する必要があった。そこでカロリック説支持者は、砲身を削る過程で金属が圧縮され金属内のカロリックが放出したという説や、金属内の潜熱が現れたという説を唱えた。

カロリック説の衰退

18世紀末頃、熱放射の研究が盛んになった。熱放射とは、熱が空間を飛び伝わる現象のことで真空中でも起こる。たとえば、太陽の熱は宇宙空間を飛び地球に伝わる。もしカロリックが物質なら真空中を移動できない

エネルギー保存則の発見

19世紀中頃、イギリスの物理学者ジュールとドイツの物理学者マイヤー、ヘルムホルツがそれぞれ別々に熱力学第1法則(エネルギー保存則)を発見した。この発見により、熱を物質ではなく運動(エネルギー)と捉えることになり、カロリック説は完全に否定された。