なにかの知識

なにかの知識

5分で学べる無駄知識

安楽死とは?わかりやすく5分で解説

移転しました。

約5秒後に自動的にリダイレクトします。

 

安楽死とは、終末期患者に対し苦痛の緩和や除去のために行う措置のこと

f:id:gmaj7dmaj7gmaj7dmaj7:20190909234330j:plain

安楽死の分類

安楽死の主な分類を以下に示す。

純粋安楽死

純粋安楽死とは、終末期患者に対して行う死期を早めない苦痛の緩和措置のことホスピス等で行われる終末医療(ターミナルケア)がこれにあたる。

消極的安楽死

消極的安楽死とは、終末期患者に対し延命治療を行わない措置のこと脳死患者の人工呼吸器を取り外す行為等がこれにあたる。

間接的安楽死

間接的安楽死とは、終末期患者に対して行う間接的に死期を早める苦痛の緩和措置のこと。患者の苦痛を和らげるために寿命が縮まるとされる医療用麻薬を投与する行為等がこれにあたる。但し、適切に使用すれば生命の短縮はないという意見もある。

積極的安楽死

積極的安楽死とは、終末期患者に対して行う直接的に死期を早める苦痛の除去措置のこと。患者を苦痛から解放するために薬物を投与して殺す行為等がこれにあたる。一般に安楽死の議論では、この積極的安楽死を認めるかどうかが焦点となる。

安楽死が認められている国

現在法律で安楽死を認めている国は、スイス、アメリカ(一部の州)、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、カナダ、オーストラリア(ビクトリア州のみ)、韓国となる。 但し、余命や対象年齢、方法等の条件は各国で異なる。

スイスでは積極的安楽死が認められていないため、自殺ほう助の形がとられる。すなわち、医師が自殺のできる環境を整え実際の措置は患者自身が行う。また、唯一外国人でも安楽死のできる国のため、世界中から安楽死希望者が集まる(デスツーリズム)

日本の安楽死裁判

1962年、殺してくれと訴えていた全身不随の父親に対し、息子が農薬入りの牛乳を飲ませて死亡させた事件(名古屋安楽死事件)の裁判で、名古屋高裁安楽死を合法とするために必要な条件(違法性阻却条件)を示した。

それは、①終末期患者、②見るに忍びない苦痛がある、③目的が苦痛からの解放、④意識が明瞭な場合は安楽死の意思表示がある、⑤原則医師による措置、⑥倫理的に妥当な方法の6要件となる。本件では、⑤と⑥が欠けていると判断され嘱託殺人罪が成立した。

1995年、昏睡状態の末期がん患者に対し、医師が親族の要望に応じて意図的に薬物を投与し死亡させた事件(東海大学安楽死事件)の裁判で、横浜地裁が新たな違法性阻却条件を示した。

それは、①終末期患者、②耐え難い苦痛がある、③苦痛から解放するための方法が他にない、④安楽死の意思表示があるの4要件となる。本件では、②と③と④が欠けていると判断され殺人罪が成立した。

両者の②と④を比較して分かる通り、1995年の要件の方が患者の意思と権利(自己決定権)を重要視している。現在日本において積極的安楽死が認められた例はない

安楽死の問題点

世界中で積極的安楽死をめぐる議論は行われている。世界では世界医師会をはじめ反対派が優勢となる。日本では国民の半数以上が賛成しているにもかかわらず、法整備が一向に進んでいない。主な論点を以下に示す。

自己決定権 

自己決定権とは、他者に危害を加えない限り自分の行動を自由に決定できる権利のこと。たとえば日本において自殺は罪に問われない。肯定派は、自分の死は自由に決められるべきと主張する。一方反対派は、生命は社会とつながり個人のものではないとする。

まず、児童ポルノ等は単純所持でも罪に問われるため、他者危害の有無だけでは判断できない。また、もし自己決定権で自分の生命を自由にできるのなら、本人の自殺を助ける自殺ほう助罪や、本人の依頼を受けて殺す嘱託殺人罪は成り立たないと反論する。

他の安楽死との差

肯定派は、禁止されている積極的安楽死と許可されている消極的安楽死は、どちらも患者が望んだうえで行われる死期を早める措置で道義的に差はないと主張する。一方反対派は、自然死と殺人には道義的な差があると反論する。 

すべり坂論法

すべり坂論法とは、少しでも許可すると坂をすべるように歯止めが利かなくなるため、許可すべきでないという論法のこと。反対派はナチスによる障害者安楽死政策(T4作戦)のような生命軽視や、社会的に安楽死を求める無言の圧力につながると主張する

一方肯定派は、すべり坂論法は推測の域を出ず根拠がないとする。

キリスト教的信念

キリスト教徒の反対派は、生命は神からの贈り物で人間が自由に奪ってはならないと主張する。一方賛成派は、一部の宗教的信念を他者に強要するべきではないと反論する。

社会的弱者の安楽死

障害を持って生まれた新生児や一部の知的障害者は自分で意思表明ができない。そのため代理人が人の生命を扱って良いかが議論される。オランダでは、重度の障害を持った新生児の安楽死が認められている。