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責任阻却事由とは?わかりやすく5分で解説

責任阻却事由とは、処罰の必要性が否定される心神喪失等の事情のこと

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犯罪の成立要件

日本の刑法では、犯罪の成否を3段階に分けて検討する。すなわち、構成要件に該当し、違法性阻却事由に該当せず、責任阻却事由に該当しない場合のみ犯罪が成立する。

構成要件

構成要件とは、条文の解釈から導かれる犯罪の型のこと。たとえば殺人罪の条文は「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。」だが、この場合の構成要件は「人を殺す行為」となる。つまり、人を殺すと殺人罪の構成要件に該当する。

違法性阻却事由

違法性阻却事由とは、違法性がないとして処罰対象とならない事情のこと。正当防衛や緊急避難等が違法性阻却事由に該当する。

責任阻却事由

責任阻却事由とは、責任能力がないとして処罰対象とならない事情のこと心神喪失や14歳未満の子供(刑事未成年者)等が責任阻却事由に該当する。

責任能力とは

日本において責任能力とは、行為の善悪を判断する能力(弁識能力)または、自分の行動をコントロールする能力(制御能力)がない状態を指す。原則、行為した時点で責任能力がない者(責任無能力者)は罪に問われない(行為と責任の同時存在の原則)。

たとえば、無理やり酒を飲まされ責任無能力者となり他人を殴っても、暴行罪には問われない。但し、故意に酒の力を借り責任無能力者となり他人を殴った場合は、飲酒時を行為した時点と判断し暴行罪に問われるのが通例(原因において自由な行為の法理)。

しかし、神経科学の発展により前頭葉に損傷がある場合、善悪の判断はできても行動を制御できない人がいることが分かってきている。これは自由意志の問題にもつながる。

責任阻却事由の種類

責任阻却事由には、心神喪失、刑事未成年、期待可能性のない行為がある。

心神喪失(刑法39条)

心神喪失とは、精神の障害によって責任能力がない状態のこと。アルコールや薬物摂取による病的な酩酊や精神病がこれにあたる。2004年、統合失調症の男が自動車で次々に人をはね殺傷した事件では、男は心神喪失で無罪となった(茨木市連続ひき逃げ事件)。

2014年、精神科に通院歴のある男が都内の図書館等でアンネフランク関連の書籍を次々に破った事件では、男は心神喪失で無罪となった(アンネの日記破損事件)。

刑事未成年(刑法41条)

刑事未成年とは、刑法上責任能力がないと判断される14歳未満の子供のこと。2002年、男と内縁の妻が知人や家族を監禁、虐待のうえ家族同士で殺し合いをさせた事件では、13歳の少女が殺人等に関与したが、責任は問われなかった(北九州監禁殺人事件)。

期待可能性のない行為

期待可能性のない行為とは違法せざるを得ない行為のこと。たとえばAを殴らなければお前を殺すと脅され、やむを得ずAを殴る行為がこれにあたる。但し、期待可能性を欠くとして日本の最高裁で無罪となった判例はない。

1933年、雇い主が船長の警告を無視し定員超過で船が転覆した事件では、雇い主に抵抗すると職を失うおそれがあった(期待可能性がなかった)として船長の刑が減軽された(第五柏島丸事件)。

海外の判例

心神喪失

1843年、イギリスで首相暗殺を試みた男が誤って秘書を殺した事件では、男は心神喪失で無罪となった。以降、この時の心神喪失の評価基準(マクノートンルール)が世界に広まった。これは、行為時にその行為の性質や善悪の判断ができたか評価するもの。

つまり、弁識能力のみに注目し制御能力は考えない。

刑事未成年

2000年、アメリカで6歳の少年が嫌いな同級生の少女を射殺した事件では、少年は責任能力がないとして無罪となった。この時は、銃の所有者の伯父が責任を問われ2年5ヶ月刑務所に入った。

期待可能性のない行為

1897年、ドイツで雇い主が御者の要望を無視し悪い癖のある馬を馬車に使い続け、ある日暴れた馬が通行人に怪我をさせた事件では、雇い主に抵抗すると職を失うおそれがあった(期待可能性がなかった)として御者は無罪となった(暴れ馬事件)。