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共観福音書問題とは?わかりやすく5分で解説

共観福音書問題とは、新約聖書の3つの福音書(マタイ、マルコ、ルカ)の内容に共通点が多く、それぞれどのように成立したのかという問題のこと

現在に至るまで解決されていない問題。

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背景

1~2世紀頃、キリスト教聖典新約聖書が成立した。 新約聖書は27の書物からなり、特にイエスの生涯や教えを記したマタイ、マルコ、ルカ、ヨハネによる4つの福音書が重視される。福音とは良い知らせという意味。

1776年、ドイツの聖書学者グリースバッハは内容に共通点の多いマタイ、マルコ、ルカの福音書の対照表(シノプシス)を発表した。これを機に3つの福音書は共観福音書と呼ばれ、起源や成立順の議論が進んだ。以下に代表的な仮説を示す。

マルコ優先

二資料説(Q資料&マルコ→マタイ&ルカ)

ドイツの神学者ヴァイスが主張した、イエスの語録集(Q資料)とマルコをもとにマタイとルカが書かれたという仮説。現在主流の考え。しかし、マルコの記述と一致せずマタイとルカで記述が一致する点(小一致問題)が不自然と指摘されている。

小一致問題の解決策として、マルコの福音書の原典に原マルコの福音書があり、マタイとルカは原マルコの福音書をもとに書かれたとする原マルコ説がある。しかし、Q資料と原マルコの福音書が見つかっていない点が指摘されている。

ファラー説(マルコ→マタイ→ルカ)

イギリスの神学者ファラーが主張した、マルコをもとにマタイが書かれ、マルコとマタイをもとにルカが書かれたという仮説。しかし、ルカがマタイよりも古い言い回しを用いている点が不自然と指摘されている。

三資料説(Q資料→マルコ→マタイ→ルカ)

ドイツの神学者ホルツマンが主張した、Q資料とマルコをもとにマタイが書かれ、Q資料とマルコとマタイをもとにルカが書かれたという仮説。Q資料をもとにマルコが書かれた可能性も含める。しかし、Q資料が見つかっていない点が指摘されている。

ウィルケ説(マルコ→ルカ→マタイ)

ドイツの神学者ウィルケが主張した、マルコをもとにルカが書かれ、マルコとルカをもとにマタイが書かれたという仮説。しかし、ルカがマルコの記述の一部をまるごと省略している点が不自然と指摘されている。

四資料説(M&Q資料&マルコ→マタイ、L&Q&マルコ→ルカ)

イギリスの聖書学者ストリーターが主張した、 マタイ独自の資料(M)とQ資料とマルコをもとにマタイが書かれ、ルカ独自の資料(L)とQ資料とマルコをもとにルカが書かれたという仮説。しかし、Q資料とMとLが見つかっていない点が指摘されている。

マタイ優先

アウグスティヌス説(マタイ→マルコ→ルカ)

アルジェリア神学者アウグスティヌスが主張した、マタイをもとにマルコが書かれ、マタイとマルコをもとにルカが書かれたという仮説。最初期の考え。しかし、マルコがマタイの重要な記述を省略している点が不自然と指摘されている。

グリースバッハ説(マタイ→ルカ→マルコ)

ドイツの聖書学者グリースバッハが主張した、マタイをもとにルカが書かれ、マタイとルカをもとにマルコが書かれたという仮説。しかし、マタイとルカでイエスの誕生や復活の記述に違いがある点が不自然と指摘されている。

ルカ優先

エルサレム学派説(A→R→ルカ→マルコ→マタイ)

イスラエルの聖書学者リンジーが主張した、 ヘブライ語の原典からギリシア語に直訳した短編集(A)をもとにAの時系列を整えたRが書かれ、AとRをもとにルカが書かれ、Aとルカをもとにマルコが書かれ、Aとマルコをもとにマタイが書かれたという仮説。

しかし、ヘブライ語の原典とAとRが見つかっていない点が指摘されている。

独立

福音書説(原典→マタイ&マルコ&ルカ)

ドイツの思想家レッシングや神学者アイヒホルンが主張した、1つの原典をもとにそれぞれが独自に書かれたという仮説。しかし、原典が見つかっていない点や、それぞれに独自の記述がある点、互いに矛盾する記述がある点が不自然と指摘されている。

断片説(メモ→マタイ&マルコ&ルカ)

ドイツの神学者シュライアマハーが主張した、イエスの弟子たちが残したメモ書きをもとにそれぞれが独自に書かれたという仮説。しかし、記述の順序まで一致する点が不自然と指摘されている。

伝承説(伝承→マタイ&マルコ&ルカ)

ドイツの神学者ヘルダーやギーセラーが主張した、口頭伝承をもとにそれぞれが独自に書かれたという仮説。しかし、記述に一字一句同じ箇所がある点が不自然と指摘されている。

マルチソース仮説(原典→改定A&Q→マタイ、P→改定A&改定B→マルコ、P→改定B&Q→ルカ)

イギリス国教会の司教マーシュが主張した、原典を改定した2つの文書(改定Aと改定B)をもとにマルコが書かれ、改定Aと改定BとQ資料をもとにマタイとルカが書かれたという仮説。しかし、原典が見つかっていない点が指摘されている。