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捕食回避戦略とは?わかりやすく5分で解説

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捕食回避戦略とは、生物が捕食されないために取る戦略のこと

以下にその種類を示す。

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捕捉回避

夜行性

夜間に活動する習性のこと

日周鉛直移動

昼を深海、夜を浅海で過ごす習性のこと

保護色

周囲の環境に溶け込む体色のこと。深海では赤色が見えないため赤い魚が多い。日なた部分(主に背中側)が暗く、日陰部分(主に腹側)が明るい体色をカウンターシェーディングという。光の作用と反対の体色により明暗がぼやけ、立体の認識が曖昧になる。

これを生物発光で行う場合はカウンターイルミネーションという。シマウマのように強いコントラストの体色を分断色という。色で体が分断され輪郭が分かりにくくなる。タコやカメレオンのように保護色を変化させるものを光学迷彩という。

隠蔽擬態

食べられないものに姿かたちが似た形質を持つこと。カレハガは枯葉、ナナフシは木の枝に似る。

多型

同一種内の個体間で異なる形質を持つこと。アオカケスという鳥は、見慣れない形質を持つ昆虫を無視する。つまり少数派が生存に有利に働くことがある。これを負の頻度依存選択という。 

希釈効果

群れを形成することで自身が捕食される確立を下げる効果のこと

捕食者飽和

一定の周期で捕食者の必要以上に大量発生する戦略のこと。13年または17年周期で発生するセミ素数ゼミという。発生周期が素数のため捕食者の発生周期と重なる可能性が低い。一部の植物は凶作と豊作を繰り返す。これをマスティングという。  

アピール

威嚇

おどしたりする行為のこと。体を大きく見せたり、武器を見せたり、吠えたりする。カトカラ属の蛾は後翅のみ鮮やかな色(フラッシュカラー)をしている。フラッシュカラーは飛ぶ時に突然現れる。

トッティング

捕食者発見時に大きくジャンプする行為のこと。ガゼルが有名。捕食者の前でジャンプしても逃げ切れるほど健康だとアピールしているとされる。これをハンディキャップ理論という。

擬攻(モビング)

集団で攻撃するふりをする行為のこと。カラスは群れで猛禽類を追いはらう。

擬傷

傷ついたふりをする行為のことコチドリは卵や雛を守るため、翼を痛めたふりをして捕食者の注意を巣からそらす。

疑死

死んだふりをする行為のこと。シシバナヘビは擬死時に悪臭のする分泌液を出す。これは腐敗している肉を演出しているとされる。

警告色

有毒生物に見られる派手な体色のこと。捕食者が有毒生物を襲った際、警告色を学習し同様の生物を襲わなくなる。蜂は黄色と黒の警告色を持つ。

ベイツ型擬態

自身は危険ではないが危険生物に似た形質を持つこと。有毒生物ではないが警告色を持つものがいる。ミミックオクトパスは、捕食者を見分けその天敵の生物に擬態する。

ミューラー型擬態

危険生物同士が似た形質を持つこと。捕食者がある危険生物の特徴を学習すると、似た特徴の生物も襲われなくなる。ドクチョウ亜科に属する蝶は毒を有するが、どれも模様や外観がよく似ている。

強力な有毒生物は襲われた際に捕食者が死ぬため学習されない。そのため、弱い毒を持つ生物に形質が似る。これをメルテンス擬態という。

攻撃

物理防衛

物理的に攻撃をする行為のことヤマアラシは体毛の針で攻撃する。トウヨウミツバチは大勢でスズメバチに覆いかぶさり、蜂球という塊となり蒸し殺す。

化学防衛

化学的に攻撃をする行為のことボンバルディアビートルは体内で化学物質を混合し、100度以上の高温ガスを噴射する。ジバクアリは体の一部を自爆させ、毒液を飛ばす。フルマカモメは粘性のあるオイルを吐き出し、捕食者の羽を不能にする。

ヌタウナギは粘液をえらに詰まらせ窒息させる。

防御

防御システム

防御するための仕組みを持つこと甲殻類の殻や節足動物の外骨格はクチクラという丈夫な膜で構成されている。亀やアルマジロは甲羅、ウニやハリセンボンは刺で身を守る。  

逃走

警戒音

捕食者の接近を仲間に知らせるために発する鳴き声のこと。群れで警戒することで捕食者の発見を早める。ベルベットモンキーは、捕食者の種類によって鳴き声を変える。

交替性転向反応

連続する分岐点に対し左右交互に曲がる習性のことダンゴムシが有名。元の場所から離れやすくなることから、捕食者から逃れるために有効だとされる。

目くらまし

囮や煙幕を用いる行為のことイカはうまみ成分のある墨で自分のダミーを作り捕食者の注意をそらす。タコはさらさらした墨で煙幕を形成し、捕食者を撹乱する。

眼状紋

目玉に似た模様を持つこと。蝶や蛾が有名。一部だけでも似ていれば、捕食者を一瞬戸惑わせ逃げるタイミングができるとされる。これをサティロス型擬態という。翅の先の小さな眼状紋は襲われる個所を重要な器官からそらすためとされる。

翅の先に捕食された跡を持つ蝶が多く確認されている。この跡をビークマークという。

自切

自ら足や尾を切り捨てる行為のこと。トカゲの尻尾切りが有名。

合成高分子とは?わかりやすく5分で解説

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合成高分子とは、人工的に合成した高分子化合物のこと

高分子とは多数の分子がひも状につながったもの。合成樹脂(プラスチック)や合成繊維、合成ゴム等があり様々な用途で利用される。 対してタンパク質やセルロース、天然ゴム等自然界に存在する高分子を天然高分子という。

以下に興味深いエピソードを示す。

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ポリ塩化ビニル

1835年、フランスの化学者ルニョーが塩化ビニルを入れたフラスコを置いておいたところ、偶然日光があたり意図せず白い固体(ポリ塩化ビニル)が合成された

セルロイド

1845年、スイスの化学者シェーンバインが、うっかり硝酸と硫酸をこぼした。それをとっさに妻のエプロン(主成分セルロース)でふき取りストーブで乾かしていたところ、突然発火した。これがきっかけでニトロセルロースを発見した。

1860年代、象牙に代わるビリヤード球の研究をしていたアメリカ人のハイアットが、実験中に指を切り液体絆創膏コロジオン(主成分ニトロセルロース)を塗ろうとした。その時不注意でコロジオンの瓶を倒しその後固まるのを見て、セルロイドの発明に至った。

セルロイドは天然由来の高分子を化学的に処理しているだけのため、合成高分子には含まれず半合成高分子という。発火しやすいため現代では廃れたが、かつて人形や映画のフィルム、セル画(セルロイドのセル)等の材料となった。

レーヨン

1878年、絹に代わる繊維の研究をしていたフランスの化学者シャルドンネが、不注意でコロジオンの瓶を倒した。その後拭き取ろうとした際、高粘性の液体が細い糸を引くのを見てレーヨンの発明に至った。

レーヨンは天然由来の繊維を化学的に処理しているだけのため、合成繊維には含まれず再生繊維という。絹に似た光沢や手触りで衣服の材料となる。

ポリエチレン

1933年、イギリスの化学メーカーICIの研究員が、高圧反応器でエチレンとベンズアルデヒドの実験を行っていたところ、意図せず配管内に白いロウ状物質が合成された。彼らはこれをエチレンの高分子化合物だと考えたが、再現実験はうまくいかなかった。

ある日別の研究員が再現実験を試みた際、容器にガス漏れが見られた。そのためエチレンを補充したが、その際偶然容器内に酸素が混入した。このことで反応がうまく進み、ポリエチレンの合成に成功した。

当時ポリエチレンは高温高圧下でのみ合成可能だった。1953年、ドイツの化学者ツィーグラーがポリエチレンの合成に失敗した。原因は洗浄時に偶然残った汚れ(金属塩)だった。そこから金属塩の研究を進め、常温常圧下での合成を可能にする触媒を発見した。

その後ツィーグラーの触媒はイタリアの化学者ナッタによって改良され、ツィーグラー・ナッタ触媒となった。1963年、ツィーグラーとナッタは新しい触媒を用いた重合法の発見とその研究でノーベル賞を受賞した。レジ袋やポリタンク等の材料となる。

ナイロン

1930年代、アメリカの化学メーカーデュポンの研究員ヒルが、上司カロザースのいない日に試作品の塊を溶かして棒をつけて引っぱり、どこまで伸びるか走り回って遊んでいた。すると伸びた試作品が意図せず頑丈な繊維となり、ナイロンの発明に至った。

名前の由来はNow You Lousy Old Nipponese(古臭い日本製品にはうんざり)、Now You Laugh Old Nippon(古臭い日本を笑え)、NewYorkとLONdon、No Run(伝線しない)、日本の農林省(NOLYN)をひっくり返す、開発者の愛称NYLと社名du pONt等の説がある。

ギターの弦やストッキング等の衣服の材料となる。

ポリテトラフルオロエチレン(テフロン)

1938年、アメリカの化学メーカーデュポンの研究員プランケットが、冷媒研究のためテトラフルオロエチレンガスを小さなボンベに入れ冷凍保存した。翌朝実験を試みたところボンベ内のガスが出てこず、意図せず白いロウ状物質(テフロン)が合成されていた

摩擦係数が低く耐熱性に優れるため、フライパンの表面にコーティングされる。

ポリカーボネート

1953年、アメリカの電機メーカーGEの研究員フォックスが、倉庫に目当ての薬品がなかったため、代わりの薬品(ビスフェノールA)を用いて実験を行った。これがポリカーボネートの発明につながった。

衝撃に強く、自動車のライトカバー、カメラのボディ等の材料となる。

導電性高分子

1967年、東京工業大学の韓国人留学生が、ポリアセチレンを合成するため助手の白川英樹からレシピのメモを受け取った。留学生は誤ってツィーグラー・ナッタ触媒の濃度を1000倍にしてしまい、粉末になるはずのポリアセチレンが膜になった。

これが導電性高分子の発見につながった。2000年、白川は導電性高分子の発見と発展でノーベル賞を受賞した。タッチパネル等の材料となる。

ハーバーボッシュ法とは?わかりやすく5分で解説

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ハーバーボッシュ法とは、ドイツの化学者ハーバーとボッシュが発明した窒素と水素からアンモニアを合成する方法のこと

ハーバーボッシュ法は火薬と窒素肥料の大量生産を可能にし、第一次世界大戦の長期化や、20世紀以降の急激な人口増加の要因となった。20世紀最大の発明の一つといわれ、しばしば空気からパンを作ったと称される。

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背景

1798年、イギリスの経済学者マルサスは著書人口論で、食糧は足し算、人口は掛け算で増加するため食糧危機(貧困)が起こると説いた。これ対してドイツの経済学者マルクスは著書資本論で、貧困の原因は失業者が多いためと反論した(相対的過剰人口論)。

当時、植物は腐植(動植物の死骸が土壌で分解された有機物)から栄養を摂取すると考えられていた(腐植栄養説)。1840年、ドイツの化学者リービッヒは著書化学の農業および生理学への応用で、植物の栄養源は有機物ではなく無機物だと説いた(無機栄養説)。

また彼は植物に必須な栄養素を窒素、リン、カリウムとした(三要素説)。1860年、ドイツの植物学者ザックスは水耕栽培による実験で、窒素、リン、カリウム、硫黄、カルシウム、マグネシウム、鉄の七つの無機物が植物の成長に必要なことを証明した。

鉱物質肥料の登場

植物の研究が進むにつれ、鉱物を原料とする無機物肥料(鉱物質肥料)が登場した。1809年、南米のタラパカ地方で窒素の鉱物質肥料となるチリ硝石の鉱床が発見された。当初火薬の原料として採掘されていたが、1960年代に入ると肥料としての需要が拡大した。

1843年、イギリスの農学者ローズは世界初のリンの鉱物質肥料、過リン酸石灰の生産を開始した。更に1861年、ドイツの化学者フランクは世界初のカリウムの鉱物質肥料、塩化カリの生産を開始し、以降三要素の肥料は鉱物資源に頼るようになった

19世紀末になるとチリ硝石の枯渇が憂慮され始めた。1898年、イギリスの化学者クルックスは近い将来世界人口が小麦の供給を上回ることが予想されるため、空気中の窒素から窒素肥料を作る技術(空中窒素固定法)を早急に開発する必要があると主張した。

空中窒素固定法の研究 

窒素分子は、2つの原子が三重結合という強い力で結ばれているため非常に化学反応が起こりにくい。空中窒素固定を行うには、窒素分子を化学反応によってアンモニア等の窒素化合物に変換する必要があるが、そのためには多くのエネルギーを必要とする。

20世紀に入り、空中窒素固定法としてノルウェーの物理学者ビルケランドと工学者アイデが電弧法を、ドイツの化学者フランクとポーランドの化学者カロが石灰窒素法を発明したが、どちらも消費電力が大きくエネルギー効率が悪かった

ハーバーボッシュ法の誕生

1909年、ドイツの化学者ハーバーはエネルギー効率の良い新しい空中窒素固定法を実験室規模で確立した。これは、触媒という化学反応を促進させるための物質を用い高温高圧下で窒素と水素を反応させ、アンモニアを合成するものだった。

このニュースを知りハーバーの実験室を訪れたドイツの化学メーカーBASFの社長ブルンクは、工業化を決断した。

工業化の課題 

工業化には、多くの課題をクリアする必要があった。たとえば高温高圧設備の開発、安価な触媒の探索がある。

高温高圧設備の開発

実験ではアンモニアの合成に200気圧程度必要としたが、当時は30気圧程度の設備しか存在していなかったため、新たに設備を開発する必要があった。設備開発はボッシュが担当した。はじめ彼の設計した設備は、高圧に耐えられず数日で反応管が破断した。

これは高温高圧下の設備内で、水素が反応管の炭素を奪い反応管の強度が低下(水素脆性)したためだと分かった。そこで反応管の内側を炭素の少ない軟鉄、外側を強度の高い普通鋼とすることで、高温高圧に耐えられる設備が完成した。

安価な触媒の探索

実験では触媒に高価で希少なオスミウムを使用したが、工業化のためには安価で手に入りやすい触媒を開発する必要があった。触媒探索はミタッシュが担当した。彼は約2万回の実験を行い、安価でアンモニア合成に適した二重促進鉄触媒を開発した。

ハーバーボッシュ法の影響 

1913年、BASFは本格的なアンモニアの製造を開始し、人類は鉱物資源に頼らず火薬や窒素肥料の大量生産が可能になった。これにより1918年ハーバーがアンモニア合成法の開発で、1931年ボッシュが高圧化学的方法の発明と開発でノーベル賞を受賞した。

1950年頃から、品種改良や化学肥料の大量導入により穀物の収量が飛躍的に増加した。これを緑の革命というが、ハーバーボッシュ法はその一翼を担った。また工業化によって得られた技術は、その後の石油化学工業の発展に大きく貢献した。

ロボトミーとは?わかりやすく5分で解説

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ロボトミーとは、ポルトガル神経科医モニスが考案した精神疾患治療のための前頭葉切截手術のこと

簡単に言うと、脳の一部を物理的に破壊し精神を安定させる手術。深刻な合併症の問題と抗精神病薬の登場により、現在では廃れた治療法。

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歴史

背景

18世紀以前、精神疾患の治療のため毒物や悪霊を体外に出すための瀉血や水責め、悪魔払い等が行われていた。その後、患者を回し続ける旋回椅子やマラリアに感染させるマラリア発熱療法、低血糖にさせ昏睡させるインスリンショック療法等が登場する。

このように、生体になんらかの刺激を与える治療法をショック療法という。ショック療法の中には一定の効果を示すものもあったが、依然精神疾患の原因は分からず不治の病とされていた

世界初の精神外科手術

1888年、スイスの精神科医ブルクハルトは精神疾患の原因が脳の特定の部位にあると考え、6人の攻撃性のある精神病患者に対し様々な脳の部位を切除した。彼は手術の結果を、2人がおとなしくなり、1人が改善後自殺、2人が変化なし、1人が死亡と記した。

この時同時にてんかん、運動麻痺、失語症等の合併症も確認された。1889年、彼はベルリン医学会議で結果を報告し、脳の神経系が入力、接続、出力の3つからなり、接続を物理的に断つことで入力、出力を傷つけずに精神疾患の病状を緩和できると主張した。

しかし医者の反応は悪く、1891年彼は精神外科手術の研究を終了した。

ロボトミーの着想

ポルトガル神経科医モニスは精神病患者にみられる、同じ思考を繰り返す強迫観念や同じ行為を繰り返す強迫行為の原因を、前頭葉の脳細胞接合部(シナプス)の不具合と考えた。これは、シナプスの異常により何度も信号伝達を繰り返してしまうというもの。

1935年夏、第2回国際神経学会議にてアメリカの神経生理学者フルトンが、チンパンジー前頭葉を切除すると性格が穏やかになったと発表した。これを受けモニスは、前頭葉視床をつなぐ神経線維の束(白質)を破壊する手術を着想した。

ロボトミーの確立

1935年11月、モニスは精神病患者の前頭葉視床を分断するため、頭蓋骨側面両側に穴を開け白質にアルコールを注射した。結果、神経線維は破壊され患者の症状に改善がみられたことから、1936年2月までの間に合計20人を手術した。

彼は手術の結果を7名が改善、7名がやや改善、6名が変化なしと発表した。また白質の破壊方法は、初期のアルコール注射からメス(ロイコトーム)による切断に変更された。彼はこの術式を、白質を表すロイコと切除を表すトミーからロイコトミーと名付けた。

この時同時に嘔吐、失禁、下痢、眼瞼下垂、眼振、無気力、無関心、見当識障害等の合併症も確認されたが、彼はあくまで一時的なものと主張した。それよりも、不治の病とされていた精神疾患が外科手術で治るというニュースに世界が注目した

ロボトミーの発展

1936年9月、モニスの影響を受けたアメリカの精神科医フリーマンは、アメリカで初めてロイコトミーを行い症状の改善を確認した。その後彼は1942年までに約200件の手術を行い63%が改善、23%が変化なし、14%が悪化(重度の脱落症状や死亡)と発表した。

また彼は実験レベルで行われていたロイコトミーを標準化し、器官の一部分を表すロボ(葉)と切除を表すトミーからロボトミーと名付けた。1946年、フリーマンによって手術室と麻酔薬と外科医が不要で簡単にできるアイスピック・ロボトミーが開発された。

これは、電気ショックを脳に与えている間に、金属製の尖った器具を瞼の裏の眼球を覆う骨(眼窩)にあてハンマーで打ち抜き、そこから前頭葉を破壊するというもの。この方法は、戦争の影響もあり精神病患者が急増していたアメリカで積極的に採用された

ロボトミーの衰退

1949年、モニスがロボトミーの発見によりノーベル賞を受賞した。この頃には世界中でロボトミーが行われ、ローマ法王ピウス12世でさえも肯定していた。しかし同時に、人間性を失う合併症を引き起こすロボトミーに対して、批判の声も上がっていた

1952年、フランスの生化学者ラボリによって世界初の抗精神病薬クロルプロマジンが発見され、精神疾患に新たな治療法が生まれた。合併症の問題と代替療法の登場により、ロボトミーは1950年頃をピークに衰退していき、1970年代に世界中で禁止された。

ロボトミー殺人事件

1979年、日本で強制的にロボトミーを受けさせられた患者が、自分の自由を奪った執刀医の殺害を企て結果的に執刀医の妻と母親を殺害した。裁判で被告人は、ロボトミーの問題を理解しているなら無罪か死刑が妥当と訴えたが、無期懲役となった。

修辞技法とは?わかりやすく5分で解説

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修辞技法とは、言語表現を豊かにするための技法のこと。レトリックともいう。

以下にその種類と例文を示す。

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直喩法(シミリー)

説明語句(まるで、みたいに等)を用い類似する物事にたとえる方法

例:タンポポみたいに旅に出た。

例:ひかりは今 巨大な棺桶と化した

隠喩法(メタファー)

説明語句を用いず類似する物事にたとえる方法

例:旅は、真っ白な画用紙だ。 

例:シャッター押すのをやめてじっと、まぶたに焼きつけています。

換喩法(メトメニー)

それと近いものや連想できるものに置き換える方法。下記で食卓は食事の、サクラサクは合格の置き換え。

例:愛は食卓にある。

例:キット、サクラサクよ。

提喩法(シネクドキ)

それが属するカテゴリの上位や下位に置き換える方法。下記の青は空の青や海の青の上位カテゴリ、ハリウッドはアメリカ映画界の下位カテゴリ。

例:あの頃のを探して。

例:ハリウッドがひれ伏した銀行マン

諷喩法(アレゴリー)

たとえ話を用いる方法。下記は人間の行動を表す。

例:能ある鷹は爪を隠す

例:弱い犬ほどよく吠える

擬態法

オノマトペ(擬態語や擬声語)を用いる方法

例:ぽかぽかの、冬にする。

例:私の気持ちまで、カラッと晴れさせてくれた雨晴駅です。

擬人法

人以外のものを人に見立てる方法

例:「ゆっくり行きましょう」と列車に言われた夏でした。

例:学校を卒業すると、春は黙って行ってしまうようになる。

倒置法

語句の順序を逆転させる方法

例:恐れるな。自ら選んだ、この運命を。

例:生き残る。たとえ一人でも

体言止め

最後を名詞で終わらせる方法

例:行くぜ、東北。 

例:姫の犯した罪と罰

反復法

同じ語句を繰り返す方法

例:簡単になんて伝えられない。本当に、本当に大切な気持ちだから。

同語反復(トートロジー

まったく同じ意味の語句を繰り返す方法

例:よそはよそうちはうち 

例:おまえのものはおれのもの、おれのものもおれのもの

反照法

最初の語句を最後でまた用いる方法

例:ぼくは生きている。話せず、身体は動かないが、確実に生きている。 

反語

答えはあるのにあえて問いかける方法

例:自分の部屋で、人生なんて考えられるか?

例:どこまで行ってもいいんですか。

対句法(パラレリズム)

同じ構成の2つの文を並べる方法

例:なぜ、殺したのか。なぜ、愛したのか。

例:音楽は彼を選び、彼は海を選んだ。  

交錯配列法

語句の構成を反転させた2つの文を並べる方法

例:生きるために食べよ、食べるために生きるな。

対照法(アンチテーゼ)

反対の表現を並べる方法

例:変わらぬものはない。失くせぬものがある。

例:何よりも君の死を恐れ、 誰よりも君の死を望む。

押韻

同様の読みの語句をリズムよく用いる方法

例:京阪のる人、おけいはん

例:メールじゃ会えない。レールで会おう。

挿入語句

括弧等を用いて補足や弁明をする方法

例:√a=18 旅路(ルート)のなかでは、人はいつも18(age)である。

省略法

三点リーダダッシュを用いて想像を膨らませたり、単に省略する方法

例:どうして旅をするのかな

頓絶法

三点リーダーやダッシュを用いて途中で発言を止める方法

例: ずっと君のことが

頓呼法

そこにいない人や物、概念に直接呼びかける方法

例:日本よ、これが映画だ。

例:世界よ、これが日本のヒーローだ!! 

緩叙法

二重否定を用いて肯定する方法

例:目立つって、悪くない

増幅法(敷衍)

より細かく説明する方法

例:顔も、名前も、住所も、電話番号も、メアドも、 (中略) 隠したいことも、忘れたいことも、知られてしまった。ただ……スマホを落としただけなのに 

誇張法

誇張する方法

例:全米が泣いた

例:この恐怖を越えた映画はいまだ存在しない

パロディ

有名なフレーズをまねる方法。

例:全米が吐いた

例:人生、山あり、川あり。  

列挙法

関連のある語句を列挙する方法。語句を連ねる列叙法の一つ。

例:緑も、空気も、私も、あたらしく。

例:裁かれるのは、肌の色か、正義か、愛か

漸層法

同じ話題に対して徐々に盛り上げる方法。語句を連ねる列叙法の一つ。

例:お父さん、怖いよ!何か来るよ 大勢でお父さんを殺しに来るよ

頓降法

盛り上げて最後に落ちをつける方法

例:使った弾丸11811 吹っ飛んだ部屋148 絶体絶命97 破った約束35 爆破したビル12 そして便器1

撞着語法

相反する表現を並べる方法

例:凶暴な純愛

例:Back to the Future 

疑惑法

2つの立場を両立させ曖昧にする方法。 

例:ああ、きもちわるくて、きもちいい。

冗語法

必要以上の説明を用いる方法。 

例:本当に大切なものはいつも失って初めてわかる

接続詞省略

接続詞を省略する方法

例:きて、みて、さわって

一般相対性理論とは?わかりやすく5分で解説

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一般相対性理論とは、ドイツの物理学者アインシュタインが発表した時間と空間(時空)に関する理論のこと

重力は質量が時空を歪ませることで生じる。また強い重力を受けるほど時間が遅くなる

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背景

20世紀初頭、ドイツの物理学者アインシュタイン特殊相対性理論を発表した。特殊相対性理論では宇宙に光速を超えるものはないとしたが、これはニュートン万有引力の法則に反する。なぜなら万有引力の法則では、重力は光速を超え瞬時に伝わるため。

1915年、彼は特殊相対性理論を拡張した重力理論、一般相対性理論を完成させた。

2つの原理

一般相対性理論では、2つの原理を採用した。

等価原理

重力と加速度運動による力(慣性力)は同じという原理のこと。地上でエレベーターが静止しているとき、乗客は重力により床に押さえつけられる。いまエレベーターのワイヤーが切れたとき、かごは自由落下(等加速度運動)を始め、かご内は無重量状態となる。

次に宇宙空間でエレベーターが静止している場合を考える。この時、かご内は無重量状態となる。いまエレベーターが上向きに加速を始めたとき、乗客は加速度運動により床に押さえつけられる。このように、局所的には重力と加速度運動を区別できない

一般相対性原理

全ての座標系で同じ物理法則が成り立つという原理のこと特殊相対性理論では、慣性系(静止もしくは等速直線運動の世界)のみを扱ったが、対象を非慣性系(加速度運動の世界)を含む全座標系に広げた。

一般相対性理論の帰結

以下に一般相対性理論の帰結を示す。

時空の歪み

簡単なモデルとして時空をトランポリン、太陽をボウリングの球、地球をビー玉に置き換える。いまトランポリンの中心にボウリングの球を置く。するとトランポリンは沈み込み周囲の布は歪む。次にビー玉をトランポリンの淵から円周方向に転がす。

するとビー玉は、回転しながら歪みに沿ってボウリングの球に引き寄せられる。この引き寄せられる力が重力になる。つまり物質の質量(エネルギー)が時空を歪ませ、重力を生む。このエネルギーと歪みの関係はアインシュタイン方程式で求めることができる

光の湾曲

エレベーターのかごが自由落下している。いまかご内で水平に光を発したとき、外からは水平に投げたボールのように光が曲がって見える(放物線を描く)。これは加速度運動によるものだが、等価原理により重力に変換できる。つまり重力は光を曲げる

1919年、イギリスの天文学者エディントンらによって、太陽の重力により光が曲がり、太陽近傍の恒星が本来の位置からずれて観測された。  

時間の遅れ

エレベーターのかご天井に光源を設置する。いまエレベーターが上向きに加速を始めたとき、天井から発した光に床が近づくため光が床に早く届いてしまう。実際は、光速度不変の原理により光が床に早く届くことは許されず、天井からみて床の時間が遅れる。

これは加速度運動によるものだが、等価原理により重力に変換できる。つまり強い重力を受けるほど時間は遅くなる

一般相対性理論の予測

以下に一般相対性理論の予測を示す。

水星の近日点移動

太陽系の惑星が公転軌道上で太陽に最も近づく点を近日点という。近日点は他の天体からの重力の影響等で少しずつ移動するが、その移動量はニュートン力学によって高い精度で求めることができた。しかし、水星の近日点移動だけは精度が悪かった。

水星は太陽の近くを通るため、太陽の重力の影響を強く受ける。一般相対性理論は、水星の近日点移動を高い精度で説明した

ブラックホール

光も脱出できないほどの強い重力を持った天体のこと。性質上直接的な観測は難しいが、様々な観測データによりいくつかの天体がブラックホール候補に挙がっている。2019年、日米欧合同研究チームがブラックホールの影を初めて観測した。

重力レンズ効果

遠方の天体が発する光が手前の天体の重力で曲げられることで、遠方の天体の像が変形したり複数になったりする現象のこと。特にリング状に変形したものをアインシュタインリングという。1979年、英米合同研究チームが重力レンズ効果を初めて観測した。

重力赤方偏移

色は光の波長の長さで決まるが、重力によって時間が遅くなることで光の波長が伸び、天体の発する光の波長が長い方へずれる現象のこと1984年、日本のISASが重力赤方偏移を始めて観測した。

重力波

物質の加速度運動によって時空の歪みが波となって光速で伝わる現象のこと。2015年、アメリカのカリフォルニア工科大とマサチューセッツ工科大等の研究チームが重力波を初めて検出した。

一般相対性理論の応用

GPS衛星

地球の重力を受けながら高速で移動するGPS衛星は、重力による時間の遅れ(一般相対性理論)と、高速による時間の遅れ(特殊相対性理論)を常に補正している。補正をしないと、1日あたり約11キロずれる。

自然選択説とは?わかりやすく5分で解説

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自然選択説とは、イギリスの博物学ダーウィンとウォレスが提唱した生存競争を進化の原動力と考える進化論のこと

自然環境が個体の変異を選択することで、生存に有利な変異の保存と不利な変異の排除が繰り返され、生物が徐々に変化していくと考える。そこに生物の意思はない

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当時の宗教観

1802年、イギリスの神学者ペイリーは著書自然神学で、複雑な時計に設計者がいるように、複雑な生物にも必ず設計者がいると主張した。これをデザイン論という。彼の考えは、聖書によらず複雑な眼の構造等科学的事実から神の存在を説明し、広く浸透した。

進化論の着想

1831年、イギリスの博物学ダーウィンイギリス海軍の測量船ビーグル号に乗船することになった。彼は5年に渡る調査で、種は不変という考えに疑問を持つようになった

その後イギリスの地質学者ライエルの著書地質学原理から、地質現象は不変の法則で、長い時間をかけて連続的に作用するという斉一説を学び、イギリスの経済学者マルサスの著書人口論から、食糧不足により人口が制限されると学び、自然選択説を着想した。

1854年、イギリスの博物学者ウォレスはマレー諸島での探検を始め、8年に渡り12万5千以上の標本を集めた。もともと種が変化すると考えていた彼は、探検を通して考えを洗練させ自然選択説を着想した。 

種の起源の発表

1958年、ダーウィンはウォレスから手紙を受け取り、ウォレスが同じ発想に到達していることに気付いた。そこで自然選択説の共同論文を発表したが反響は少なかった。1859年、ダーウィンは著書種の起源自然選択説を体系化した。

彼は生物が共通祖先から進化したと主張したため、聖書の記述と異なるとされ多くの批判を受けた。

キリンの例

キリンの先祖の中にたまたま少し首の長い個体が生まれる。その個体は、高所の木の葉を食べることができ、天敵に早く気付けるため他の個体に比べ子孫を残せる確率が高い。これが子孫に遺伝し繰り返され、現代のキリンになったと考える。

自然選択説の証拠

初めて進化論を体系化したのはフランスの博物学者ラマルクだが、彼の提唱した用不用説は証拠や根拠に乏しく、激しい批判を受けた。ダーウィンは、多くの客観的事実から自然選択説を説明した。以下に自然選択説の証拠とされる例を示す。

警告色

有毒の生物に見られる派手な体色のこと。たまたま目立つ色をした個体が捕食者に襲われた際、毒を持つ個体と覚えられその後襲われにくくなることで、生存に有利だったと考える。

保護色

周囲の環境に溶け込む体色のこと。たまたま見つかりにくい色をした個体が生存に有利だったと考える。

擬態

生物が攻撃や防衛のため他の物に姿かたちを似せること。たまたま何かに似た姿の個体が被食者や捕食者をだませたことで、生存に有利だったと考える。

マデイラ島の甲虫

北大西洋マデイラ島に生息する甲虫の多くは飛ぶことができない。マデイラ島は強い風が吹く島で、飛べる甲虫は風に流され海に落ち死ぬことが多く、うまく飛べない甲虫の方が生存に有利だったと考える。このように自然選択説は進化と退化を区別しない

自然選択説の問題点

以下に自然選択説の問題点とダーウィンの反論を示す。

中間種の不在 

種が連続的に変化するならば先祖と子孫を結ぶ中間種がいるはず。しかし中くらいの長さの首を持つキリンの中間種は見つかっていない。これをミッシングリンクという。これに対し、中間種は生存競争に敗れ絶滅したが、生物が化石に残るのは稀と反論した。

その後の発掘調査により様々な生物で中間種の化石が見つかっている。

複雑な器官の存在

脊椎動物の眼(カメラ眼)はピント調整、光量調整、眼球保護等複雑な構成だが、そこに至るまでの不完全な眼が生存に有利とは思えない。これに対し、少しの明暗が分かるだけでも生存には有利と反論した。

性的二形と行き過ぎた進化の存在

生存に有利な変異のみが保存されるならば、雌雄の形質の相違(性的二形)は不自然。またクジャクの羽やマンモスの牙のように、行き過ぎた進化が生存に有利とは思えない。これに対し、異性から好まれるために起きた進化と反論した。これを性選択という。

遺伝のメカニズム

遺伝のメカニズムが説明されていない。これに対し、獲得形質が遺伝するというパンゲン説を唱え反論したが、実験により否定された。その後、チェコの司祭メンデルによって遺伝の仕組みが解明された。これをメンデルの法則という。

変異のメカニズム

変異のメカニズムが説明されていない。これに対しての反論はない。その後、オランダの植物学者ド・フリースによって突然変異が発見され、変異が突然変異によって起こると説明された。

ネオダーウィニズム

その後、自然選択説は遺伝学等と結び付き欠点を補いながら現代も発展している。これを総合説という。

ゲシュタルト心理学とは?わかりやすく5分で解説

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ゲシュタルト心理学とは、チェコの心理学者ヴェルトハイマーらが創始した、知覚や認知を部分や要素ではなく構造や全体として捉える心理学の学派のこと

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背景

19世紀、ドイツの心理学者ヴントが、心理学に科学的な手法を取り入れた実験心理学を確立した。これにより、哲学の一分野だった心理学が一つの学問として独立した。彼は、実験によって心(意識)を構成する要素の抽出を試みた。

この考えはイギリスの心理学者ティチナーに引き継がれ、心を最小単位の要素に分解し、その要素から心を解明する構成主義心理学が生まれた。彼らのように、全体(この場合は心)は要素の総和からなるとする立場を、還元主義または要素主義という

ゲシュタルト質とは

1890年、オーストリアの心理学者エーレンフェルスが論文ゲシュタルト質についてを発表した。この論文では、音楽において曲のキーを変えても同じ曲だと知覚できる現象を取り上げた。この現象を移調可能性という。

彼は、音の要素が異なっても同様のメロディーを知覚できるということは、メロディーを一つ一つの音の集まりだけではなく、全体のまとまりとして知覚しているためと考え、この全体のまとまりをゲシュタルト質と呼んだ。ゲシュタルトは形態という意味。

彼の属するグラーツ学派では、心は要素の総和にゲシュタルト質が加わったものと考えたが、要素が集まってゲシュタルト質が発現するという要素主義的な考えは残していた。

ゲシュタルト心理学の成立

1912年、チェコの心理学者ヴェルトハイマーが仮現運動の研究をまとめた論文、運動視に関する実験的研究を発表した。仮現運動とは、2つの図を最適な時間間隔で交互に表示させたとき、あたかも図形が運動しているかのように知覚される現象のこと。

この現象は映画やアニメの原理として知られ、踏切の赤色灯や自動販売機のイルミネーションでも確認できる。このように知覚は対象を要素ではなく全体として捉える性質を持つ。そこで要素主義を否定し全体を重視するゲシュタルト心理学が誕生した。

彼の属するベルリン学派では、心はゲシュタルトからなり分解することはできないと考えた。彼らのように、全体(この場合は心)は要素の総和とは異なり分解できないとする立場を全体論またはホーリズムという

刺激と感覚の関係

要素主義者は、刺激からは必ず1対1で対応する感覚が生じると考える(恒常仮定)。一方ゲシュタルト心理学者は、刺激から感覚が生じるというよりも脳の活動が感覚を生じさせると考える。彼らは、この根拠に知覚の恒常性を用いる。

知覚の恒常性とは、刺激が変化しても同様の感覚が得られる現象のこと。たとえば、赤いリンゴを持ったまま明るい部屋から暗い部屋に移動する。客観的には暗い部屋のリンゴの方が赤黒いと感じるはずだが、実際は暗闇でも同じリンゴの色を認識できる。

 

プレグナンツの原理

プレグナンツの原理とは、ヴェルトハイマーが発表した知覚に関する法則のこと。人間は、対象を個別に認識するのではなく単純で秩序のあるグループに分けて認識する(群化)。たとえば破線は、短い線の集まりではなく一本の線としてつながって知覚される。

プレグナンツの原理は、同じ要素の刺激から異なる感覚が生じることを示している。その中で代表的な近接・類同・閉合・連続・過去経験の要因を以下に示す。身近な例ではリモコンのボタン配置等に活用されている。

近接の要因

近接しているもの同士はまとまって認識される。以下の場合、丸は2個ずつグループに見える。

○○  ○○  ○○  ○○

類同の要因

性質の同じもの同士はまとまって認識される。以下の場合、丸は色ごとグループに見える。

○○●●○○●●

閉合の要因

線は互いに閉じるように認識される。以下の場合、かっこはひし形のグループに見える。

<><><><>

連続の要因

曲線は連続して認識される。以下の場合、ファイは円と縦線の組み合わせに見え、半円が2つあるようには見えない。

Φ

過去経験の要因

過去に経験したものは同様に認識される。以下の場合、中華人民共和国は中華と人民と共和国に分かれる。初めて漢字を見る人、つまり経験のない人にこれは起きない。

中華人民共和国

ゲシュタルト心理学の発展

1898年、アメリカの心理学者ソーンダイクが、刺激と反応の反復が学習となると考えた(試行錯誤学習)。彼は紐を引くと扉が開く箱に猫を入れ、箱外の餌を取る時間が試行錯誤で減少することを確認した。この実験は行動主義心理学の誕生につながった。

一方ドイツの心理学者ケーラーは、全体で捉え洞察することが学習となると考えた(洞察学習)。彼は、チンパンジーが天井に吊るしたバナナを突然道具を用いて取る様子を確認した。これは学習が反復で成立しないことを意味する。

ケーラーはゲシュタルト心理学を学習に応用し、ドイツの心理学者コフカは記憶、発達等に応用した。