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ゲシュタルト心理学とは?わかりやすく5分で解説

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ゲシュタルト心理学とは、チェコの心理学者ヴェルトハイマーらが創始した、知覚や認知を部分や要素ではなく構造や全体として捉える心理学の学派のこと

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背景

19世紀、ドイツの心理学者ヴントが、心理学に科学的な手法を取り入れた実験心理学を確立した。これにより、哲学の一分野だった心理学が一つの学問として独立した。彼は、実験によって心(意識)を構成する要素の抽出を試みた。

この考えはイギリスの心理学者ティチナーに引き継がれ、心を最小単位の要素に分解し、その要素から心を解明する構成主義心理学が生まれた。彼らのように、全体(この場合は心)は要素の総和からなるとする立場を、還元主義または要素主義という

ゲシュタルト質とは

1890年、オーストリアの心理学者エーレンフェルスが論文ゲシュタルト質についてを発表した。この論文では、音楽において曲のキーを変えても同じ曲だと知覚できる現象を取り上げた。この現象を移調可能性という。

彼は、音の要素が異なっても同様のメロディーを知覚できるということは、メロディーを一つ一つの音の集まりだけではなく、全体のまとまりとして知覚しているためと考え、この全体のまとまりをゲシュタルト質と呼んだ。ゲシュタルトは形態という意味。

彼の属するグラーツ学派では、心は要素の総和にゲシュタルト質が加わったものと考えたが、要素が集まってゲシュタルト質が発現するという要素主義的な考えは残していた。

ゲシュタルト心理学の成立

1912年、チェコの心理学者ヴェルトハイマーが仮現運動の研究をまとめた論文、運動視に関する実験的研究を発表した。仮現運動とは、2つの図を最適な時間間隔で交互に表示させたとき、あたかも図形が運動しているかのように知覚される現象のこと。

この現象は映画やアニメの原理として知られ、踏切の赤色灯や自動販売機のイルミネーションでも確認できる。このように知覚は対象を要素ではなく全体として捉える性質を持つ。そこで要素主義を否定し全体を重視するゲシュタルト心理学が誕生した。

彼の属するベルリン学派では、心はゲシュタルトからなり分解することはできないと考えた。彼らのように、全体(この場合は心)は要素の総和とは異なり分解できないとする立場を全体論またはホーリズムという

刺激と感覚の関係

要素主義者は、刺激からは必ず1対1で対応する感覚が生じると考える(恒常仮定)。一方ゲシュタルト心理学者は、刺激から感覚が生じるというよりも脳の活動が感覚を生じさせると考える。彼らは、この根拠に知覚の恒常性を用いる。

知覚の恒常性とは、刺激が変化しても同様の感覚が得られる現象のこと。たとえば、赤いリンゴを持ったまま明るい部屋から暗い部屋に移動する。客観的には暗い部屋のリンゴの方が赤黒いと感じるはずだが、実際は暗闇でも同じリンゴの色を認識できる。

 

プレグナンツの原理

プレグナンツの原理とは、ヴェルトハイマーが発表した知覚に関する法則のこと。人間は、対象を個別に認識するのではなく単純で秩序のあるグループに分けて認識する(群化)。たとえば破線は、短い線の集まりではなく一本の線としてつながって知覚される。

プレグナンツの原理は、同じ要素の刺激から異なる感覚が生じることを示している。その中で代表的な近接・類同・閉合・連続・過去経験の要因を以下に示す。身近な例ではリモコンのボタン配置等に活用されている。

近接の要因

近接しているもの同士はまとまって認識される。以下の場合、丸は2個ずつグループに見える。

○○  ○○  ○○  ○○

類同の要因

性質の同じもの同士はまとまって認識される。以下の場合、丸は色ごとグループに見える。

○○●●○○●●

閉合の要因

線は互いに閉じるように認識される。以下の場合、かっこはひし形のグループに見える。

<><><><>

連続の要因

曲線は連続して認識される。以下の場合、ファイは円と縦線の組み合わせに見え、半円が2つあるようには見えない。

Φ

過去経験の要因

過去に経験したものは同様に認識される。以下の場合、中華人民共和国は中華と人民と共和国に分かれる。初めて漢字を見る人、つまり経験のない人にこれは起きない。

中華人民共和国

ゲシュタルト心理学の発展

1898年、アメリカの心理学者ソーンダイクが、刺激と反応の反復が学習となると考えた(試行錯誤学習)。彼は紐を引くと扉が開く箱に猫を入れ、箱外の餌を取る時間が試行錯誤で減少することを確認した。この実験は行動主義心理学の誕生につながった。

一方ドイツの心理学者ケーラーは、全体で捉え洞察することが学習となると考えた(洞察学習)。彼は、チンパンジーが天井に吊るしたバナナを突然道具を用いて取る様子を確認した。これは学習が反復で成立しないことを意味する。

ケーラーはゲシュタルト心理学を学習に応用し、ドイツの心理学者コフカは記憶、発達等に応用した。

予定説とは?わかりやすく5分で解説

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予定説とは、フランスの神学者カルヴァンが提唱した救う者と滅びる者は予め神によって決められているという神学思想のこと

簡単に言うと現世でいくら善行を積んでも、どんな罪を犯しても、その人が天国に行けるか地獄に落ちるかは既に神によって決められているため、覆ることは無いという思想。

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背景

16世紀、カトリック教会は腐敗していた。その最たる例として、贖宥状(免罪符)の販売がある。贖宥状は、罪の赦しをお金で買える言わば天国行きの切符といえる。やがて教会のやり方に疑問を持つ者が現れた。

ルターの宗教改革

ドイツの神学者ルターは、新約聖書パウロ書簡より着想を得て信仰義認説を唱えた。信仰義認説とは、信仰によってのみ救われるという思想のこと。彼は善行によって救われる(行為義認説)と主張する教会と対立し、プロテスタントの旗手となった。

カルヴァンの登場

フランスの神学者カルヴァンは、ルターに感化されスイスで予定説を唱えた。予定説は、何をしても運命が変わらないという決定論的な立場をとるため、人々は自分が救われるのかどうかを確かめる術を求めた。そこで彼は仕事に励むことを奨励した

彼は仕事が神から与えられたものと考え(職業召命説)、仕事に励み成功する人を神が救済リストから外しているはずはないと説いた。当時の宗教観では労働や蓄財は卑しいものとされていたため、画期的な発想だった。

アルミニウスの主張

予定説は人間の自由意思を認めない。神が単独で無条件に選別する(神単働説)。これに対しオランダの神学者アルミニウスは人間に自由意思はあると考えた。彼は、神はその人が自由意思によって信仰心を持つかどうか予知し選別する(神人協働説)と主張した。

その後アルミニウスの主張はドルト会議によって公式に退けられた。また同会議によってカルヴァン主義の5つの特徴(全的堕落、無条件的選び、制限的・限定的贖罪、不可抵抗的恩恵、聖徒の堅忍)が明確に定義された。これをドルト信仰基準という。 

予定説と資本主義

予定説は労働や蓄財を肯定していたため、ヨーロッパ各地の商工業者に支持された。19世紀、ドイツの経済学者ウェーバーは論文プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神の中で、予定説が資本主義を発展させたと論じている。

たとえばプロテスタントが多いアメリカ、ドイツに比べ、プロテスタントが少ないイタリア、フランスの経済は発展していない。

スイスで時計産業が盛んな理由

16世紀、フランスでのカルヴァン支持者はユグノーと呼ばれた。ユグノーはフランスで宗教的迫害を受けていたため、やがて各国へ亡命していく。その中でスイスへ亡命したユグノーには手工業者が多く、時計製造技術を持つものもいた。

一方スイスでは、カルヴァンの改革により贅沢品が規制されたため、宝飾細工職人が仕事を探していた。そこで、ユグノーと地元宝飾細工職人の協業が始まった。これがスイス時計産業のルーツとされる。

余談

一般にプロテスタントの多い国(アメリカ、ドイツ等)は食事や美的センスが悪いと言われる。これはプロテスタントが質素倹約の是とするため。そのためアメリカやドイツよりもイタリアやフランスの方が、料理の質が高く有名なファッションブランドも多い。

特殊相対性理論とは?わかりやすく5分で解説

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特殊相対性理論とは、ドイツの物理学者アインシュタインが発表した時間と空間(時空)に関する理論のこと

時間と空間は相対的なもので、誰から見ても同じというわけではない。具体的には物体は光速に近づくほど時間が遅くなり、長さが縮む。また質量(m)はエネルギー(E)が姿を変えたもので、その関係式はE=mc^2(Cは光速度)となる。

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背景

19世紀、光を伝える物質エーテルを探す過程で、エーテルの存在を否定する光速度不変という観測結果を得た。20世紀初頭、ドイツの物理学者アインシュタインは、エーテルの存在を仮定せず2つの原理からなる特殊相対性理論を発表した。

2つの原理

相対性原理

全ての慣性系(静止しているか等速直線運動の世界)で同じ物理法則が成り立つという原理のこと。たとえば公園でも等速の電車内でも、リンゴは真下に落下する。原理自体は16世紀から存在するが、その対象を力学の法則から光を含む全ての物理法則に広げた。

光速度不変の原理

真空中の光の速度は、光源や観測者の動きによらず一定という原理のこと。たとえば光速に近い速さで飛ぶ宇宙船の中で光を見ても、月面上で光を見ても、それぞれが見る光の速度は変わらない。

特殊相対性理論の帰結

以下に特殊相対性理論の帰結を示す。

速度の合成則

月を秒速26万キロで周回する宇宙船から秒速5万キロのロケットを発射する。ニュートン力学に従えば、月面から見たロケットの速度Vは秒速31万キロとなるはずだが、実際は秒速約27万キロとなる。つまり物体が光速(秒速約30万キロ)を超えることはできない

同時刻の相対性

月を等速で周回する宇宙船の真ん中に光源を置き、その前後に同じ距離を離して光検出器を設置する。いま光源を点灯したとき、船内から見たら2つの検出器が同時に反応する。しかし月面から見たら、検出器は同時に反応せず、後方の検出器が先に反応する。

これは月面から見ると、点灯してから検出器に光が届くまでに宇宙船が移動し、後方の検出器が光源に近づくため。つまり時間は絶対的なものでなく、見る人の立場によって変わる

時間の遅れ

月を等速で周回する宇宙船に、筒の中を光が移動する装置(光時計)を設置する。光は筒の底から発し、上まで到達するのに1秒かかる。いま船内で1秒が経過する。しかし月面では、まだ1秒たっていない。

これは月面から見ると、宇宙船が移動することで光の移動距離が伸びるため(光は上ではなく斜め上に進む)。このことで月面からは船内の時間が遅れて見える。逆に船内からは月面の時間が遅れて見える。つまり物体は光速に近づくほど時間が遅くなる

長さの短縮

地球から1光年離れた場所から、宇宙船で地球に行く。宇宙船が光速の90%で移動する場合406日かかる計算だが、実際は宇宙船内から見て179日で到着する。この時地球では406日たっている。これは宇宙船内の時間が地球時間から0.44倍遅れるために起こる。

しかし光でさえも365日かかる距離を、宇宙船が179日で移動できるはずがない。実際は宇宙船から見て地球までの距離(長さ)が縮む。つまり物体は光速に近づくほど長さが縮む。これをローレンツ収縮という。今回の場合、1光年は0.44光年に縮む。

質量とエネルギーの等価性

質量とは、物体の動かしにくさの量のことで重量とは異なる。重量は月だと6分の1になるが質量は変わらない。エネルギーとは、仕事をすることができる能力のことで熱、光、電磁気、核など様々な形態がある。

特殊相対性理論は、エネルギーと質量の関係をE=mc^2(エネルギー=質量×光速度の2乗)と導く。光速度は一定なので質量とエネルギーは同じもの、つまり質量もエネルギーの一形態。たとえば広島原爆では、ウラン235の質量約0.7gがエネルギーに変換された。

特殊相対性理論の拡張

1915年、アインシュタイン特殊相対性理論を拡張した重力理論、一般相対性理論を発表する。

余談

相対性とは

アインシュタインは相対性を「熱いストーブの上に手を置いていれば、1分が1時間のように感じるでしょう。可愛い女の子と一緒にいれば、1時間が1分のように感じるでしょう。それが相対性です。」と説明している。

アインシュタインの脳

アインシュタインの死後、解剖を担当した医者が彼の脳を盗み、スライスした標本を世界中の研究機関へ送った。日本でも近畿大学新潟大学に標本が保管されている。

ウラシマ効果

SFでは、特殊相対性理論における時間の遅れのことをウラシマ効果という。これは浦島太郎が竜宮城で数日過ごした間に村が数百年経過していたという話が、時間の遅れを思わせるため。

亀が光速で移動する宇宙船、竜宮城は別の惑星のメタファー(修辞技法参照)という解釈もある。同様に時間が遅れる話は、アメリカのリップ・ヴァン・ウィンクル、中国の述異記でも見られる。

資本論とは?わかりやすく5分で解説

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資本論とは、ドイツの経済学者マルクスが発表した資本主義経済を分析した著書のこと

資本主義社会では一部の資本家に富が集中し貧富の格差が生まれるとし、将来的に資本主義が成熟すると、労働者の不満が爆発し社会主義に移行すると説く。

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背景

19世紀のヨーロッパでは、資本主義体制によって長時間労働や恐慌といった問題が発生していた。ドイツの経済学者マルクスは、資本家の息子であるエンゲルスの助けを借り資本主義の仕組みを批判的に分析した本、資本論を発表する。以下にその内容を示す。

資本主義における商品

資本主義社会ではあらゆる物が商品になり、商品の集まりが富となる。そのため富の最小単位を商品と考える。

商品の性質

商品には2つの性質がある。

使用価値

使用して役に立つ価値のこと。たとえば水は、のどの渇きを防ぐという意味でダイヤモンドに比べ使用価値が高い。

交換価値

他の商品と一定の比率で交換できる価値のこと。たとえばダイヤモンドは、のどの渇きを防ぐことはできないが、沢山の水と交換できるため同量の水に比べ交換価値が高い。交換価値が等しい商品同士は交換できる。これを等価交換という。 

貨幣の性質

貨幣には2つの性質がある。

単なる貨幣としての貨幣

商品の交換を仲介する貨幣のこと。商品をW、貨幣をGとすると、商品を売る→貨幣を得る→新たな商品と交換するというW-G-Wの流通形態をとる。

資本としての貨幣

より多くの貨幣を生みだす貨幣のこと。貨幣を売る→商品を得る→より多くの貨幣と交換するというG-W-G'の流通形態をとる。

資本

資本とは自己増殖する価値のこと。そのため資本としての貨幣は、新たな貨幣を生む。このG-W-G'を意識的に行う人が資本家と呼ばれる。資本家は手持ちの貨幣で工場を建て、労働者を雇い、商品を生産、販売することで手持ちの貨幣を増やす。

交換価値の正体

19世紀、交換価値の正体を商品に費やした労働の量とする考えがあった(労働価値説)。説に従えば、資本家と労働者の間では賃金と労働が等価交換されるはず。しかし実際は、資本家に富が集中していた。

資本論では、 賃金と等価交換されているのは労働でなく労働力と説明する。たとえばネジを作る場合、賃金は労働者のネジの出来高(労働)に対してではなく、労働者のネジを作る能力(労働力)に対して支払われると考える。

資本主義社会では、労働力も商品となる。労働力の交換価値は、労働者が引き続き働くために必要な費用(生活費)。 労働者は自分の労働力を資本家に売り、代わりに賃金(生活費)を得る。

労働力商品の特殊性

一般的な商品、たとえば水は使用する(飲む)とその分価値が無くなる。しかし労働力には、使用する(労働させる)ことで新たな価値を生む特殊性がある。資本家は、この労働力商品の特殊性を利用する。

格差が生まれる理由

賃金は、仕事の成果(労働)に対して支払われるものではない。どれだけ働いても賃金は一定。そのため資本家は、労働者を低賃金で長時間働かせようとする。なぜなら、労働者が賃金以上働いた分が資本家の利益となるため。

この資本家の利益を剰余価値剰余価値を得る行為を搾取という。この搾取によって資本家と労働者の間に富の格差が生まれる

資本主義の未来

競争により利益を独占する大資本家が生まれる→労働者はますます貧困に苦しむ→労働者が団結し反逆が起こる→資本家の資本(私有財産)が没収されるという、資本主義崩壊の未来を予言している。

余談

マルクスの影響

ロシアでは、マルクスの思想をベースに社会主義革命が起こり、ソ連が誕生した。しかし資本主義が成熟していないのにも拘らず改革を進めたため、失敗したと言われている。

マルクス記念碑の頭像率

マルクスの記念碑(墓含む)は、なぜか顔メインが多い。有名な記念碑はイタリア、イギリス、ドイツに存在するが、ドイツ版は顔の高さだけで7.1mある。ちなみにイギリス版は、過去に爆破未遂にあっている。敵も味方も多い。

クオリアとは?わかりやすく5分で解説

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クオリアとは、主観的な体験から得られる質感のこと。感覚質ともいう。

具体的にはバラの赤さ、シルクの滑らかさ、砂糖の甘さ、音楽の心地よさ、二日酔いの気持ち悪さ、サウナの暑さ、煙の焦げ臭さといった言葉に表せない質感がこれにあたる。

痛覚一つとっても、ズキズキ、ピリピリ、ガンガン、ジンジン、チクチク、キリキリ等様々なクオリアがある。

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クオリアの性質

クオリアの性質を以下に示す。

言表不可能性

言表不可能性とは、言葉で表すことができない性質のこと。生まれつき色が見えない人に、青色を認識する物理的なメカニズムは伝えることができても、青さ(青のクオリア)を伝えることはできない。

私秘性

私秘性とは、外部から観測できない性質のこと。主観的な体験に現れるクオリアは、客観的に観測できない。

意識のハードプロブレム

現代科学では、全身麻酔のメカニズムは解明されていない。しかしこのような物理的な現象(薬と生体の相互作用)は、それがいかに複雑だとしても科学的に調べる方法がある。これに対しクオリアは、その性質から科学的に調べる方法がない

オーストラリアの哲学者チャーマーズは、前者を意識のイージープロブレム、後者を意識のハードプロブレムと区別し、意識の解明を楽観視していた科学者に対し一石を投じた。

立場ごとの解釈

クオリアのとらえ方について、それぞれの立場での解釈を以下に示す。

物理主義

物理主義とは、この世界がすべて物理的なもので構成されているという立場のことクオリアは科学の発展と共にいずれ物理的に解明され説明できるとする考え(還元主義)や、そもそも存在しないとする考え(消去主義)等がある。

たとえば、かつて生気という非物理的な生命力のようなものの存在が信じられていたが、科学の発展と共に廃れた。物理主義者はクオリアも同じ道を辿ると考えている。他に修正された概念にフロギストン、カロリック、エーテル等がある。

二元論

二元論とは、この世界が物理的なものと心的なもので構成されているという立場のことクオリア現代科学の範囲を広げれば解明できるとする考え(自然主義的二元論)や、人類には解明できないとする考え(新神秘主義)等がある。

思考実験

クオリアについての思考実験を以下に示す。

メアリーの部屋

メアリーの部屋とは、1986年にオーストラリアの哲学者ジャクソンが提起した、物理現象をすべて理解する人間にクオリアが生じる可能性を考える思考実験のこと。科学者メアリーは、白黒の部屋で白黒の本や白黒のテレビを見て育った。

彼女は色覚の専門家で、科学的に色を認識する仕組みをすべて理解している。いまメアリーが部屋を出て初めて色を見るとき、彼女は何か新しいことを学ぶだろうか。彼女が新しいことを学ぶと考えた場合、それは物理的なものではないことになる。

つまり、クオリアが存在するということになり物理主義の否定につながる。これを知識論法という。物理主義者は、新しいことは何も学ばないという批判や、既知の事実を別の側面から捉えただけで新しい事実は学ばない(旧事実/新様式戦略)と批判する。

逆転クオリア

逆転クオリアとは、同じ外部刺激から異なるクオリアが生じる可能性を考える思考実験のこと。友人が生まれつき緑のクオリアを赤と呼んでいたとする。いま夕焼けを眺めお互いに「赤くて綺麗」と話したとき、私は赤、友人は緑のクオリアを感じている。

一般に物理主義では、同じ外部刺激からは同じクオリアが生じると考えるため、このような可能性があってはならない。つまり物理主義の否定につながる。これを想像可能性論法という。

物理主義者は、可能性を想像できるからと言ってそれが存在可能ということではないと批判する。

哲学的ゾンビ

哲学的ゾンビとは、1990年代チャーマーズが提起した、見た目は変わらないが意識体験(感情、クオリア等)のみが存在しない人間のこと哲学的ゾンビは友人と談笑したり映画を見て泣いたりするが、そこに楽しさや悲しさはない。

つまり、そこにクオリアはなくただ物理的な反応のみで行動する。この世界には意識体験がある。一方哲学的ゾンビのみの物理法則に支配された世界(ゾンビワールド)も論理的に想像できる。するとこの世界にはゾンビワールドにない意識体験があると分かる。

つまり、この世界は物理的なものだけではないということになる。これは想像可能性論法の一つでゾンビ論法ともいう。物理主義者は、科学が進めばゾンビワールドは論理的に存在できなくなるという批判や、意識体験は錯覚でみんな哲学的ゾンビと批判する。

用不用説とは?わかりやすく5分で解説

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用不用説とは、フランスの博物学者ラマルクが提唱した生物の意志を進化の原動力と考える進化論のこと。用不用、獲得形質の遺伝の2つの法則からなる。

発達の限界を超えていない動物において、頻繁に使用する器官は使用期間に比例して発達し、使用しない器官は次第に衰え(用不用)、その形質は生殖によって新しく生まれた個体に受け継がれる(獲得形質の遺伝)というもの。

現代では遺伝学の発達と共に否定された説だが、いまだに支持者もいる。

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背景

17世紀、化石や地層の研究から過去の地球に現在存在しない生物がいたことが明らかになった。この発見は物議を醸すことになる。なぜなら神が宇宙を創造したとする創造論では、神の意志以外で生物が滅ぶことは無いと考えられていたため。

キュヴィエの考え

フランスの博物学者キュヴィエは、過去に天変地異が起きそのたびに生物種が滅び化石になったと主張した(天変地異説)。天変地異説は創造論とも矛盾しない。なぜなら聖書にはノアの大洪水の記述があるため。

またこの頃、シベリアで氷漬けのマンモスが綺麗な状態で発見される。これは極めて急激な変化に対応できなかったマンモスとされ、天変地異説を後押しすることになる。彼は自身の研究から生物種は不変と考えた。

ラマルクの考え

フランスの博物学者ラマルクは、過去に存在した生物種は現存の生物種に進化したと主張した。彼の発想は、生物は無生物から発生し(自然発生説)、単純なものから複雑なものへ徐々に変化(前進的発達)していくというもの。

また創造論に対しては理神論的な立場をとった。理神論とは、神の活動は宇宙を創造するのみで、創造後の宇宙は神が定めた自然法則に従って働き続け、神は介入しないという考えのこと。

用不用説の発表

1809年、ラマルクが著書動物哲学で用不用説を発表した。用不用説は、用不用と獲得形質の遺伝という2つの法則からなる。 

用不用

用不用とは、発達の限界を超えていない動物において、頻繁に使用する器官は使用期間に比例して発達し、使用しない器官は次第に衰えるという法則のこと。

獲得形質の遺伝

獲得形質の遺伝とは、個体が獲得もしくは失った形質は、生殖によって新しく生まれた個体に受け継がれるという法則のこと。

キリンの例

キリンの先祖は高所の木の葉を食すため首を伸ばす努力をし、一世代で少し首が伸びる(用不用)。これが子孫に遺伝し(獲得形質の遺伝)繰り返され、現代のキリンになったと考える。

反響と検証

1868年、ダーウィンが著書飼養動植物の変異で獲得形質の遺伝を支持した。彼は動植物の細胞にはジェミュールという粒子が存在し、獲得した形質の情報が生殖細胞に集まり子孫に伝わると考えた。これをパンゲン説という。

ドイツの動物学者ヴァイスマンは、尾を切断されたマウスの子供が短い尾になるか、何世代にも渡って調べた。結果マウスの尾に変化は見られず、用不用説は否定された。しかしラマルク支持者は、尾の必要性やマウスの意思が無視されているとして反論した。

用不用説自然選択説

用不用説は目的論的で、生物が主体性を持ちより複雑なものに方向性を持って進化(発達)すると考える。一方イギリスの博物学ダーウィンとウォレスが提唱した自然選択説は機械論的で、主体性も方向性もなく進化(変化)すると考える。

進化に関する一部の現象は、自然選択説よりも用不用説の解釈の方が受け入れやすい。

鳥の祖先は、骨を中空にしてまで体重を減らし、筋肉をつけ、翼を持ち初めて空を飛べるようになった。脊椎動物の眼(カメラ眼)は、ピント調整の水晶体、光量調整の瞳孔、像を映す網膜等、複雑な構成となっている。身体を何かに似せる擬態も同じく複雑。

こうした複数の要素により機能する能力は自然選択説で説明しづらい。なぜなら自然選択説では、個々の能力が生存に有利であったことを説明する必要があるため。空を飛べるのが有利なのは分かるが、骨が中空なのが本当に有利なのかということ。

ネオラマルキズム

用不用説では、空を飛びたいや物を見たいという動物の意思に従って一つ一つの能力を獲得していったと考える。これはとても分かりやすい。そのため用不用説は一度廃れたがその後再評価され、現代ではネオラマルキズムと呼ばれている。

その他

1944年のオランダ飢饉で、当時妊娠中の母親から生まれてきた子供やその子孫が、成人後肥満になる確率が高いという研究結果がある。これは、母親が食糧の少ない環境で過ごしたことで栄養の吸収効率が上がり、その形質が子供に遺伝したとも考えられる。

その他獲得形質の遺伝や、進化における生物の主体性を疑わせる現象が多く確認されているため、用不用説は今なお研究されている。

エーテルとは?わかりやすく5分で解説

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エーテルとは、かつて光の媒質として考えられていた物質のこと

ドイツの物理学者アインシュタイン特殊相対性理論により存在が不要となり、現代物理学では取り扱われなくなった概念。媒質とは波を伝える物質のこと。たとえば海の波の媒質は海水となる。

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由来

古代ギリシャでは天空を神の領域と考えアイテールと呼称した。ギリシャ神話には、この領域を神格化した天空神アイテールが登場する。

哲学者アリストテレスは、この世界が火、空気、水、土の四元素で構成される地上と、アイテール(第五元素)で構成される天空から成ると考えた。また宇宙はアイテールで満たされており、アイテールによって天体が地球の周りを円運動すると主張した。

エーテル仮説

17世紀オランダの物理学者ホイヘンスは、光が波の性質を持つ事を主張した(光の波動説)。そこで光が波ならば媒質が存在すると考え、光の媒質をエーテルと名付けた。以降、宇宙空間はエーテルで満たされているという考えが支持される(エーテル仮説)

エーテルの風

エーテルと光は、空気と音の関係に似ている。音に向かっていけば、音が速く耳に届き、音から逃げていけば音が遅く耳に届く。これは音の速度に自分の速度(=風の速度)が足し引きされるため。エーテル仮説が正しいとすれば、光にも同じことが起こる。

地球は宇宙空間(エーテルで満たされた空間)を移動しているため、エーテルの風を受ける。つまり地球上で観測される光の速度には、地球の速度(=エーテルの風の速度)が足し引きされると考えられた

マイケルソン・モーリーの実験

19世紀、アメリカの物理学者マイケルソンとモーリーが、エーテルを検出するため方位の違いによる光の速度差の観測を試みた。しかし実験では光の速度に実験誤差以上の差異が見られず、エーテルの観測は失敗に終わった

物理学者は、実験結果とエーテルの存在の整合性を図るため様々な仮説を立てた。

エーテル随伴仮説

エーテル随伴仮説とは、エーテルが地球に随伴して一緒に動いているためエーテルの風を感じることができないという仮説のこと。しかし、この仮説では光行差現象を説明できなかった。

光行差現象

光行差現象とは、地球上から見た天体が実際の位置からずれて観測される現象のこと。これは天体から発した光が地球に届くまでに、地球が宇宙空間を移動するために起こる現象だが、エーテル随伴仮説を採用するとずれは生じなくなってしまう。

たとえば光を雨、エーテルを大気、地球を観測者とする。いま雨が降っているとき、観測者が停止(大気が観測者に随伴)していれば雨は真上から降ってくるが、観測者が移動(大気が観測者に随伴しない)していれば、雨は斜め前から降ってくるように見える。

この雨が斜め前から降ってくるように見える現象が光行差現象となる。

ローレンツ収縮仮説

ローレンツ収縮仮説とは、エーテルに対して移動する物体は進行方向に長さが縮むという仮説のこと。この仮説は物体が縮むことでエーテルの風の影響が相殺されてしまうため、光の速度差が観測できなくなり前述の実験と辻褄が合う。

オランダの物理学者ローレンツらが唱えた。

エーテルの終焉

20世紀、ドイツの物理学者アインシュタインが、エーテルの存在を仮定せずに光の性質を説明できる特殊相対性理論を発表した。これによりエーテルはほとんど議論されなくなった。ちなみにローレンツ収縮の発想は、特殊相対性理論でも取り入れられた。

その他

コンピュータネットワーク規格のイーサネットは、どこにでも偏在するエーテル(イーサ)にちなんで名付けられた。

軍用動物とは?わかりやすく5分で解説

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軍用動物とは、軍事目的に利用される動物のこと

犬、猫、鳩、馬、牛、象、ラクダ、ロバ、イルカ、熊、ペンギン等様々な動物が従軍している。イギリスでは、ディッキンメダルという動物のみに贈られる勲章が存在する。

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優れた嗅覚と聴覚に加え学習能力や忠誠心が高いことから伝令、偵察、捜索、探知、追跡、警備、輸送、戦闘、セラピー等の目的で運用される。ナチスドイツでは犬が人並の知能を持つと考え、人と会話できる犬の部隊を作るために様々な訓練が行われた。

靖国神社には、戦場に散った犬の霊をなぐさめるために軍犬慰霊像が奉納されている。

対戦車犬

第二次世界大戦時、ソ連がドイツ戦車の攻撃を目的に対戦車犬を導入した。これは、爆弾と起爆スイッチを背負った犬が戦車の下に潜ったときに、起爆スイッチに戦車が触れ爆発し、戦車を破壊するというもの。

一定の効果を発揮したが、訓練に自軍の戦車を用いたため味方戦車に向かうもの、騒音に怯えパニックで戻ってきたもの等が自陣で自爆したケースもあった。

船内の警備、セラピー等の目的で運用される。特に船内において病気の感染や電気配線を齧る等の被害をもたらすネズミの駆除で活躍する。

アコースティックキティー

冷戦時、CIAが猫に小型マイクとアンテナを取り付け敵国の会話を盗聴することを試みた。しかし目標に接近するのが困難と判断され計画中止となった。ちなみに最初の任務では、放たれた直後タクシーにひかれ死亡している。

かつてWikipediaでは、アコースティックキティーの事を"聞き耳猫ちゃん"というふざけた名前で記載していたが、現在は修正されている。

帰巣本能が強く伝令、偵察等の目的で運用されたが、現代では通信技術の発達により衰退した。第二次世界大戦時イギリスの鳩による伝令(いわゆる伝書鳩)が脅威であったドイツは、鷹を使って襲わせた。

ちなみに第二次世界大戦時、前述のディッキンメダルを一番多く受章した動物は鳩。靖国神社には、戦場に散った鳩の霊をなぐさめるために鳩魂塔が奉納されている。

プロジェクト鳩

第二次世界大戦時、アメリカは鳩によるミサイル誘導を試みた。訓練した鳩をミサイルに搭乗させ、スクリーンに映し出される標的の映像をつつかせることによって誘導を行うというもの。電気的な誘導システムが確立されたことにより計画は中止となった。

優れた脚力を持つことから人や物資の輸送目的で運用される。現代でも険しい山岳地帯や砂漠地帯で活躍している。靖国神社には、戦場に散った馬の霊をなぐさめるために戦歿馬慰霊像が奉納されている。

イルカ

優れた遊泳能力や高い知能を持つことから偵察、救助、探知等の目的で運用される。イラク戦争では機雷の掃海で活躍した。イルカが機雷を探知したら周りを旋回し、ヒレに付けた発信機で友軍に機雷の位置を知らせるというもの。 

コウモリ

第二次世界大戦時、アメリカがコウモリ爆弾を開発した。コウモリは家屋の軒下や屋根裏に隠れる習性がある。そのため時限爆弾をつけたコウモリをカプセルに入れ飛行機から投下し家屋を破壊するという計画。予算がつかず中止となった。

アメリカでは、鮫の脳に電極(スティモシーバーと呼ばれる)を埋め込み遠隔操作を行う計画がある。鮫は微弱な電気を感じることができるため、この能力を索敵に用いる。実際にネズミや鳩、昆虫の脳に電極を埋め込み、遠隔操作することに成功している。

桃太郎

犬、猿、雉が軍用動物として登場している。ちなみに地域によっては石臼、針、馬の糞、百足、蜂、蟹、水桶等を家来にするパターンもある。